体も心も一番の発育期で、子どもから大人へ向かう大切な時期にお酒を飲むと、体にも悪い影響が出ます。未成年者の飲酒が禁止されているのは、このためです。
長い期間にわたってお酒をたくさん飲みすぎると、体のさまざまなところに影響をおよぼします。
脳が成長している時期にお酒を飲むと、脳の働きが悪くなり、記憶力、判断力、思考力、意欲の低下が起こります。さらに、アルコールが脳の細胞をこわし、脳がちぢんでしまう危険があります。脳に対するアルコールの影響は、未成年者に特に強いことが知られています。
成長期にお酒を飲むと、身長や体重の伸びが悪くなったり、骨の成長が遅れたりします。成長期は、骨がどんどん
太くなったり大
きくなったりして成長する
時期です。この時期にお酒を大量に飲むと、成長が遅れる原因となります。
体に入ったアルコールは、大部分が肝臓で二酸化炭素と水に分解されてから体内をめぐり、最終的に、尿、汗、息として体外に出ていきます。お酒をたくさん飲
むと、
肝臓は休みなく働き続ける結果となります。また、アルコールの量が肝臓の処理能力を超えてしまうと、アルコールが肝臓を素通りして、他の臓器に悪影響をおよぼすことになります。
成長期にある未成年者は、アルコールを分解する肝臓の働きが、まだ未完成です。アルコールを分解する働きも十分ではありません。
※分解する働きは、人の体の中にもともと備わっている「酵素」とよばれるものによります。
お酒を飲むと、大人にくらべて短期間で、さまざまな臓器の病気の原因となる危険性が高くなります。急性アルコール中毒になりやすいのも、そのためです。
未成年者は、心も成長している途中です。人格が形成される重要な時期にお酒を飲み続けると、むずかしいことやつらいこと、がまんすることなどを、さけるようになってしまいます。
勉強に必要な集中力や記憶力が低下して、勉強する気持ちがなくなってしまいます。
自分の将来や夢を実現することを、考えられなくなってしまいます。
体験を通して自分や他人の感情を考え、思いやる力が弱くなってしまいます。また、経験のない困難な事態に出会
ったときには、それを
乗りこえていくことで得られる、心の成長が止まってしまいます。
おこりっぽくなったり、自己中心的な性格に変
わったりしてしまいます。
若いうちからお酒を飲み始めた人ほど、思いがけない事件や事故などに巻きこまれることが多いといわれています。また、他人に対して暴力的になることもあるため、事件を起こしてしまうケースも多いとされます。
お酒を飲むと学習意欲が失われ、「成績が下がってしまう」、「授業をさぼってしまう」など、学校生活に問題が出ます。
集団で不良行為を働いたり、校内暴力、家庭内暴力などを起こしたり、危険な行動に歯止めがきかなくなります。また、夜中に出歩くようになり、非行につながりやすくなります。
お酒を飲み始める年齢が若いほど、お酒を飲まずにはいられなくなってしまう病気、「アルコール依存症」にかかりやすいといわれています。未成年者は、体や心が成長の真っ最中にあり、まだ十分に完成されてはいません。がまんすることの大切
さについて、
時間をかけて学んでいく時期でもあります。そのような未成年の時期
にお
酒を飲み始めると、その量を自分
でおさえることができなくなります。そのため、たくさん
飲みすぎてしまい、「アルコール依存症」になる危険が高くなってしまうのです。
「アルコール依存症」とは、一言でいうと、お酒をどうしても飲まずにはいられなくなってしまう病気です。この病気が進行すると、体
からアルコールがなくなったときに、あせをかいたり、
手足がふるえたり、げん覚が見えたりといったことが起こります。それをおさえるために、ふたたびアルコールを飲んでしまい、最後にはふつうの生活を送ることができなくなってしまいます。
習慣的な飲酒を始めてから「アルコール依存症」になるまでの期間が、未成年者は大人にくらべて短いといわれています。大人の男性で15〜20年、大人の女性で5〜10年ですが、未成年者はわずか数カ月〜2年で「アルコール依存症」になります。未成年者が「アルコール依存症」になると、お酒をやめにくく、大人よりも回復しにくいといわれています。