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ケープタウンの街を散策しても「アフリカに来た」という実感はほとんど湧かないかもしれない。新市街には近代的な高層ビルが林立し、ウォーターフロント地区には歴史を感じさせるヨーロッパ風の建物が並ぶ。アフリカの他の都市に比べると、白人やカラード(混血)の比率が高く、アジアや中東からの移民らしき人々の姿も目につく。気候も穏やかなうえに、心配していた治安の悪さもほとんど感じない。アフリカというよりは、南仏やフロリダのリゾートタウンにいるような感覚に近い。簡単にいうと、けっこうオシャレなのだ。
1652年、オランダ東インド会社が補給基地を建設して以来、この街は南アフリカの玄関口として発展してきた。そのため街を開発したのはオランダ人であり、イギリスやフランス、ドイツなどの列強各国がそれに続いた。そんなヨーロッパからの移民によって伝えられたもののひとつが、ワインという訳だ。ケープタウンから「ワインランド」と呼ばれるワイン地区へは、クルマで30〜60分ほど。郊外に出ると、ますますアフリカっぽさが希薄になる。山の麓には見渡す限りのブドウ畑が広がり、その間に17〜18世紀に建てられたケープ・ダッチ様式のワイナリーが点在する。
500軒以上あるワイナリーではそれぞれに個性的なワインが造られているが、ぜひ試してほしいのが南アフリカの固有品種、ピノ・タージュ。ピノ・ノワールとサンソーを掛け合わせた赤ワインは、プラムやチェリーを感じさせるチャーミングな果実味が特徴で、スパイシーなケープ・マレー料理にもよく合う。ワインランドでは、ワインだけではなく、ポートワイン、ブランデー、シェリーなども造っている。地元の人に「ウイスキーは?」と尋ねると、「オフコース」との答え。とはいえ、ワインに比べると、生産量はごくわずからしい。いいウイスキーを造るには、もう少し過酷な気候条件が必要なのかもしれない。
また南アには、アフリカ原生の果実から造った「アマルーラ」というクリーム・リキュールもある。もちろん地ビールだってある。なにはともあれ、バーを訪れるのが楽しみになってきた。