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10周年を迎える記念大会、舞台はオーストラリア・メルボルン「ニッカ・パーフェクト・サーヴ 2019」決勝レポート!NIKKA PERFECT SERVE 2019 Finals in Melbourne, Australia

The Everleigh エヴァレー

「ニッカ・パーフェクト・サーヴ」とは

2010年から続く、ニッカウヰスキー主催のバーテンダー・コンテスト。カクテルの完成度を競うコンペティションとは一線を画し、バーテンダーとしての総合的力が試される。背景にあるのは、“パーフェクト・サーヴとは、お客様がバーのドアを開けた瞬間からはじまる”という考え。『Ichi-go Ichi-e 一期一会』 をコンセプトとするこのコンテストに、毎年多くのバーテンダーがチャレンジしている。

●今年の決勝大会は、初夏のメルボルンで

2019年12月2日、第10回「ニッカ・パーフェクト・サーヴ」のファイナルが開催された。今年は19の国が参加し、12箇所で予選が行われた。年々突破が難しくなっている予選を勝ち抜いた12名のファイナリストにとって、次のハードルは、メルボルンへの長い移動距離と時差だ。例えばパリからの場合、途中ドバイやアブダビで乗り継いでほぼ丸一日かかり、時差は10時間。オーストラリアの暦の上では12月1日が夏の始まりにもかかわらず、決勝大会開催の週はたまたま曇りがちで北半球と変わらない気温だったのがせめてもの救いだ。メルボルンはヴィクトリア州の州都で、豊かな緑に恵まれ、歴史ある建物と近代ビルが融合する美しい都市。オーストラリアのカフェ文化発祥の地としても知られる。

今回の会場に選ばれたのは、『The Everleigh エヴァレー』。2011年のオープン以来、メルボルンのバーシーンをリードするカクテルバーの一つで、権威ある「The World's 50 Best Bars」にランクインするなど数々の受賞歴を誇る。どこか懐かしさを感じさせるようなクラシカルなインテリア、ゆったりした空間と、繊細な味わいのカクテルが心地良い。ここを舞台に、アメリカ、イギリス、イタリア、オランダ、ギリシャ、スペイン、チェコ、ドイツ、フィンランド、フランス、ロシアからのバーテンダーによる競演が始まる。

●ジャッジは世界を股にかけて活躍する現役バーテンダー

今年のジャッジは、ロジェリオ・五十嵐氏、エリック・ローリンツ氏、ニッカウヰスキー海外担当のアサヒビール 楫恵美子の3名。ロジェリオは、東京・恵比寿のカクテルバー 『Trench』 などを共同経営するバーテンダー。「ニッカ・パーフェクト・サーヴ」のジャッジを務めるのは、ニューヨークで行われた2017年の決勝大会に次いで2回目だ。ロジェリオは、2018年9月のシドニー・バーウィーク期間中にもメルボルンとシドニーを訪れている。わずか5日の滞在中、現地のバーテンダー向けセミナーやバーイベントを集中的に実施し、大きな話題を呼んだ。特に、有名カクテルバーをロジェリオが “乗っ取り”、 スペシャルカクテルを提供する「Bar Takeover」はあまりの盛況ぶりで、準備していた2日分の材料を1日で使い切り、スタッフがあわてて追加の材料を買いに走った。

エリック・ローリンツは、ロンドンのサヴォイホテル『American Bar』 10代目ヘッドバーテンダー。彼の在籍期間中、『American Bar』は、「The World's 50 Best Bars 2017」で1位に選ばれるなど 数々の賞を獲得。また、現在各国のトップバーで活躍している優秀なバーテンダーを輩出した。2019年5月、エリック自身もサヴォイを卒業。ロンドンのメイフェア地区に 『Kwãnt クウェント』をオープンし、世界中からゲストを迎えている。「ニッカ・パーフェクト・サーヴ」のジャッジを務めるのは、ロンドンで開催された2015年の決勝大会以来2回目となる。

コンテストは例年どおりの2部構成。午前中は、ファイナリスト全員が同じ課題に臨む「テクニカルテスト」、午後には、ゲストに扮するジャッジ3人を相手に接客する「Omakase コンテスト」が行われる。12名の順番を決めるのは、恒例となったアミダくじ。緊張で固くなっているバーテンダー達に、笑顔が戻る。

●テクニカルテスト、2019年の課題は「ヴェスパー・マティーニ」

午前のテクニカルテストは、ファイナリストにとって大きなプレッシャーだ。課題は直前になるまで一切明かされないので準備のしようがない。なんとかして勝ちたいバーテンダーならば、過去の大会に出場した先輩に聞いて予想することはできるかもしれない。しかし、過去の課題のほとんどが、制限時間内に与えられた材料を使ってスタンダードなカクテルをつくること。「マンハッタン」「ウイスキーサワー」「ギムレット」など、バーテンダーであれば日常的につくるカクテルだけに、このテストでは、基本的なバーテンダーとしての技術が試される。

アミダくじで順番を決めたあと、12名のうち前半の6名がバーカウンターに誘導される。その間後半の6名は別室で待機し、バーの中で何が起こっているか伺い知ることはできない。全員が同条件で競い合うため、情報管理は徹底されている。そして、発表された課題は「ヴェスパー・マティーニ」。予想が当たったように大きくうなずいたり、意外な表情を見せたりと、バーテンダー達の表情は様々だ。

「ヴェスパー・マティーニ」は、イギリスの作家イアン・フレミングのスパイ小説『007』シリーズの第1作である『007 カジノ・ロワイヤル』 で、主人公ジェームズ・ボンドがオーダーするカクテル。マティーニの1種だが、オリジナルレシピは、ジン3、ウオッカ1、キナ1/2。氷のように冷えるまでよくシェイクして、レモンピールを添えるもので、その名はジェームズ・ボンドが愛するボンドガール、ヴェスパー・リンドに由来している。

テクニカルテスト

テクニカルテスト

今回材料として用意されているのは「ニッカ カフェジン」「ニッカ カフェウオッカ」に、様々なキナリキュールやヴェルモット、シェリー、そしてレモンやオレンジ。多くのバーテンダーは、まず味の中心となるジンを改めてテイスティング。柚子、甘夏、かぼす、シークアーサーの和柑橘のフレッシュなアロマと、キリリとした山椒の香味を持つ個性的なジンに、他の材料のフレーバーをどう組み合わせるかを考えるためだ。しかし、実はそれ以上に重要なカギとなるのが、ニッカならではのカフェ式連続式蒸溜機によるベーススピリッツの厚みに、どれくらいのフレーバーを足すのか。「ヴェスパー・マティーニ」は、ジンとウオッカのベーススピリッツの違いや相性によっても味のバランスが大きく変わる。共にカフェ式連続式蒸溜機の蒸溜液からつくられる「ニッカ カフェジン」と「ニッカ カフェウオッカ」を合わせることで、とてもなめらかなカクテルになるが、そこに副材料のアクセントをどのくらい効かせるかは重要なポイントだ。レシピ調整に与えられた時間は15分。

ジャッジにとっても、テクニカルテストの審査は緊張感を伴う。レシピ調整終了後、6名のバーテンダーが一斉に審査用のカクテルをつくりカウンターに差し出す。ショートカクテルだけに素早くテイスティングをしなければならないが、限られた時間で繰り返し味を確かめる。そして後半の6名の審査へと続く。12杯の「ヴェスパー・マティーニ」は透明に近いものから乳白色、やや黄味の強いものまで様々だ。外観と共に、味わいの違いについて細かくメモをとっていく。ジャッジによって好みはあるものの、やはり審査のポイントは「ヴェスパー・マティーニ」としてのバランスと完成度だ。

審査中のジャッジ

ロジェリオ・五十嵐氏

ロジェリオ・五十嵐氏

エリック・ローリンツ氏

エリック・ローリンツ氏

ヴェスパー・マティーニ

ヴェスパー・マティーニ

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