「ニッカ・パーフェクト・サーヴ」とは
2010年から続く、ニッカウヰスキー主催のバーテンダー・コンテスト。毎年厳しい予選を勝ち上がった各国・各エリアの代表が頂点を目指して決勝を戦う。問われるのは、大会スローガンである 『Ichi-go Ichi-e - 一期一会』 の心、そしてその心を実践するためのバーテンディング。数々のコンペティションが開催される中、一筋縄ではいかない、ユニークかつタフなコンテストとして、毎年多くのバーテンダーがチャレンジしている。
アテネに12か国のファイナリストが集結。
2018年11月26日、第9回 「ニッカ・パーフェクト・サーヴ」のファイナルが開催された。会場に選ばれたのは、1874年から続く由緒あるホテル『Hotel Grande Bretagne ホテル・グランド・ブルターニュ』 のメインバー、『Alexander's Bar アレクサンダーズバー』。バックバーの荘厳なタペストリーは、18世紀につくられたハンドメイドで、ホテルのシンボル的存在として知られている。国賓を含む数々の著名人がこのホテルを訪れており、中には、このタペストリーを眺めながら至福の一杯を楽しんだVIPもいたかもしれない。
そんな格式あるバーを舞台に、自分の実力を試す機会を得たファイナリストは12名。2018年は、ヨーロッパ・ロシアの10ヵ所に加えて、アメリカ2ヵ所、計12ヵ所で予選が行われた。アメリカ、イギリス、イタリア、オーストリア、ギリシャ、スロバキア、デンマーク、フランス、ベルギー、ポルトガル、ロシアから、個性豊かな面々がアテネに集結。決勝大会の前日には、パルテノンを望むテラスレストランでウェルカムディナーが開催された。
ジャッジは伝説のバーテンダー。
今年のジャッジは、チャールズ・シューマン氏、ジム・ミーハン氏、ニッカウヰスキー海外担当のアサヒビール 楫恵美子の3名。チャールズは、歴代のジャッジの中で最多、5回目の登場だ。彼が世界を旅してトップバーテンダーと交流する様子を記録に収めたドキュメンタリー映画、『シューマンズバーブック(英題 Bar Talks by Schumann)』は、2017年、ドイツを皮切りに日本を含む各国で公開され、大きな話題となった。ミュンヘンの『Schumann's Bar』のオーナーバーテンダーとして、77歳になった今でも現場に立つ。彼の存在そのものが世界中のバーテンダーを魅了してやまない。
ジムもまた、世界のバーシーンをリードしてきたレジェンドの一人。2007年、ニューヨークでSpeakeasy(隠れ酒場)『PDT』をオープン。ホットドッグショップの片隅にある電話ボックスが実はバーの入口だった、というユニークなつくりと、ジムの創り出す多彩なカクテルは、瞬く間に話題となった。現在では、ジャーナリストやコンサルタントとしても活動の場を広げ、今も世界中を飛び回る。近著 『Meehan's Bartender Manual』 では、バーテンダーに必要なあらゆる知識や心構えを体系的にまとめ、高い評価を得ている。
例年通り、ファイナルは2ラウンドで構成される。午前中は、ファイナリスト全員が同じ課題に臨む「テクニカルテスト」、午後は、ゲストのリクエストに応じて接客する 「Omakaseコンテスト」が行われ、バーテンダーとしての力量が多角的に審査されるのだ。
新商品「ニッカ デイズ」 ※日本未発売
テクニカルテスト、2018年の課題は 「ブールヴァルディエ」
毎年テクニカルテストの課題は直前に知らされる。ファイナリストにとっては事前の準備が難しく、第一のハードルとも言える。過去には、ニッカの知識を問う筆記テスト、スイーツとのマリアージュが出題された年もあるが、多くの場合、特定の商品を使ったスタンダードカクテルが課題となる。9回目の今回、ファイナリスト達にはウイスキーの入ったグラスが配られた。それをみんなでブラインドテイスティング。そして発表された今年の課題は、たった今試飲したばかりのウイスキーを使った 「ブールヴァルディエ」。
そのウイスキーの正体は、ヨーロッパで2018年11月に発売された新しいブレンデッドウイスキー「ニッカ デイズ」だった。アルコール度数40%、選び抜かれた数多くの原酒がブレンドされているが、中でもカフェグレーンと宮城峡のノンピートモルト原酒が味わいを構成するキーとなっている。コンセプトは、"whisky for everyday"。フローラルな香り、やわらかくスムースな飲み心地で、その名の通り、おいしいウイスキーを日常的に楽しんでもらいたい、という思いで開発された新商品だ。
ブールヴァルディエの数々
「ブールヴァルディエ」といえば、欧米ではポピュラーなカクテルの一つ。「ネグローニ」のウイスキー版ともいえるカクテルで、カンパリ、スウィートヴェルモットに、バーボンウイスキーの組み合わせが一般的。ニッカのラインアップから選ぶなら、多くのバーテンダーは、凝縮されたリッチな味わいの「フロム・ザ・バレル」を手に取るかもしれないが、今回指定されたのは軽やかでソフトな「ニッカ デイズ」。ファイナリスト達は、いつものレシピを一旦忘れ、一から味わいの構成を考えなければならなくなった。バーステーションに用意されているのは、「カンパリ」、「アペロール」と数種のアマロ系リキュール、そして様々なヴェルモット。その組み合わせは無限大で、制限時間15分の間にベストバランスの一杯を追い求める。
微妙な味わいの違いを審査
赤い。カウンターに並んだカクテルは、当然ながらどれも赤い。しかしその味わいは微妙に異なる。ウイスキーの味わいがとても繊細なだけに、どのリキュールとヴェルモットを選び、それぞれどのくらいの量を入れるかで、全体の味わいのバランスは大きく変わる。「ブールヴァルディエ」は、”伊達男”という意味だが、12人12様の伊達男ができあがった。少し苦みの効いたワイルドなタイプから、甘さ控えめで端正なタイプ、優しく寄り添うような繊細なものまで。ジャッジは氷が溶けないうちにスピーディーにテイスティングしなくてはならない。ポイントは、「ニッカ デイズ」の味わいが活かされているかどうか。わずかな味わいの差を慎重に探っていく。