「ニッカ・パーフェクト・サーヴ」とは
ヨーロッパを舞台に、2010年から続くニッカウヰスキー主催のバーテンダー・コンテスト。毎年、厳しい予選を勝ち上がった各国・各エリアの代表が頂点を目指して決勝を戦う。競い合うのは、大会スローガンである『Ichi-go Ichi-e - 一期一会』の心、そしてその心を実践するためのバーテンディング。日本のニッカウヰスキーが主催し、本物のサービスを追求するという、実にオリジナルなコンペティションである。
今年のファイナルは、海を越えてニューヨークへ。
2017年12月3日、第8回「ニッカ・パーフェクト・サーヴ」のファイナルが開催された。ヨーロッパのバーテンダーが競うコンテストながら、今年の開催地はアメリカ、ニューヨーク。会場となった『Pegu Club ペグクラブ』は、ソーホー地区にある2005年の開業のカクテルバー。長いカウンターと広々としたスペースで、多くのニューヨーカーが集う。ここで多くのバーテンダーたちが鍛えられ、アメリカのみならず世界のバーシーンをリードする人材を輩出している。
今年のファイナリストは9名。16ヵ国のバーテンダーが参加した欧州での予選を勝ち抜いた、イギリス、イタリア、ギリシャ、スイス、スロバキア、デンマーク、ドイツ、フランス、ロシアからの代表が大西洋を越えてニューヨークに集結した。華やかなクリスマスイルミネーションに高揚感が増す中、時差による影響もうまくコントロールし、ベストコンディションを保つのは容易ではない。
ジャッジは、デイヴ・ブルーム氏、ロジェリオ・五十嵐氏、ニッカウヰスキー海外担当のアサヒビール国際部、楫恵美子の3名。デイヴは日本でもおなじみのライターで、10月に新著書『The Way of Whisky』を発表したばかり。この本の執筆のため、日本の9ヵ所のウイスキー蒸溜所をはじめ、伝統工芸の工房も取材し、ウイスキーのみならず日本のものづくりの真髄に迫っている。「ニッカ・パーフェクト・サーヴ」のジャッジを務めるのは今回が3回目。
一方、ロジェリオは、東京・恵比寿のカクテルバー『Trench』など3店のバーを共同経営するバーテンダー。ブラジル・サンパウロ出身。東京をベースにしながらも、ゲストバーテンディングとして海外のバーに赴く機会も多い。今回初めてのニューヨーク訪問となったが、彼の存在は既に多くの人に知られており、現地のバーテンダーたちから大きな歓待を受けていた。
ファイナルは2ラウンドで構成される。午前中は、ファイナリスト全員が同じ課題のカクテルをつくる「テクニカルテスト」。午後には、ゲストのリクエストに応じて接客する「Omakaseコンテスト」が行われ、バーテンダーとしての力量が多角的に審査される。ファイナリストの実技の順番を決めるのは、2015年から恒例となった”あみだくじ”。初めて見る不思議なチャートにみんなが見入り、自分の順番に一喜一憂。スタート直前の張り詰めた空気がほんのひととき和んだ。
テクニカルテスト、今年の課題は「ギムレット」。
課題が毎年変わるテクニカルテスト。過去にはマンハッタン、オールドファッションド、ウイスキーサワーが出題されたほか、ニッカの知識を問う筆記テスト、スイーツとのマリアージュなど、ファイナリストにとっては予測が難しく、課題の発表の瞬間は緊張感が走る。今年の課題は、「ニッカ カフェジン」を使ったギムレット。バーテンダーなら誰もが日常的につくるスタンダードカクテルだ。
「ニッカ カフェジン」は、「ニッカ カフェウオッカ」と共に、5月の東京インターナショナルバーショーで世界初披露され、その直後から海外でも話題となっていた。6月の日本での発売に続き、9月にはヨーロッパとアメリカ、10月にはシンガポールでも発売が開始され、ジンの本場ロンドンをはじめ、パリ、ニューヨークなどでも既に高い評価を得ている。
海外のバーテンダーを魅了しているのは、「ニッカ カフェジン」の印象的なフレーバー。特に柚子、甘夏、かぼす、シークァーサーの4つの和柑橘が織りなす目の覚めるようなシトラス感、厳選されたグリーンの山椒によるシャープな香味と独特の収斂性は、“比類なき”と称されている。しかし、「ニッカ カフェジン」がユニークとされる最大の理由は、それらボタニカルの強い個性を受け止める馥郁(ふくいく)としたベーススピリッツだ。原料由来の香りや成分がしっかりと残るカフェ式連続式蒸溜機から生まれる、“上質なキャンバス”のようなベーススピリッツがあるからこそ、ボタニカルの特長が際立ち、かつ調和のとれたジンとなる。
バーステーションに用意されているのは、「ニッカ カフェジン」、複数の甘味料、ライムやレモンの生果実、ジュースやコーディアルなど。「ニッカ カフェジン」の味わいを確かめ、副材料の微妙な味わいの違いを吟味しながらレシピを調整、自分なりのパーフェクトなギムレットをつくる。与えられた制限時間15分の中でファイナリストたちは目の前の1杯のみに集中する。
シンプルだからこそ、つくり手の個性が如実に表れる。だからカクテルは面白い。強い個性を持つ「ニッカ カフェジン」を使うため、どれも似たギムレットになるかと思えば、できあがったのは9人9色のスタイル。「ニッカ カフェジン」のキリリとした山椒の風味を活かすため、甘みを極力抑えてシャープに仕上げたものもあれば、逆に甘みを強めにして柔らかに仕上げたもの、あえて果肉を少し残したものもあった。ガーニッシュもレモンゼスト、カットライム、オレンジピールと様々。ジャッジにとっても、ショートカクテルだけに、香りや全体の味わいの調和、後味などを、短い時間で淡々と比較しなければならない難しいテストであった。