もうひとつ同店が自慢にするのは、350種という膨大なウイスキーコレクション。ずらりと並んだボトルの中でも、ニッカの日本語ラベルはゲストたちの目を釘づけにするようだ。
「『あれはサケですか?』と聞かれて、ウイスキーですよとお答えすると、みなさん『知らなかった!』と驚かれますね」
オーストラリアではここ2、3年で、ようやく日本のウイスキーが入手しやすくなったばかり。知名度はまだそれほど高くはない。
「ただオーストラリアではウイスキーの人気が高まっています。そしてジャパニーズウイスキーのクオリティは世界最高峰。特にニッカはラインアップが豊富で、誰もが楽しめる何かを提供してくれます」
毎週火曜日には、シングルモルトとそれに合うチーズをマッチングさせたスペシャルメニューを提供。例えば宮城峡なら、ブリア・サヴァラン(フランス産の白カビチーズ)のような、トリプルクリームの濃厚なチーズを合わせる。宮城峡の持つ柑橘系のさわやかなニュアンスが、口の中に広がった脂肪分をほどよくすっきりさせてくれるという。
“食べながら”楽しむウイスキーを積極的に提案しているのも“フードフォーカス”のゆえんだ。
ところでこの「オー・ド・ヴィー」でバーテンダーを務めるジャック・ソティ氏、実は今年5月にアムステルダムで行われた「ボルス・アラウンド・ザ・ワールド」のファイナリストという実力派。グランドファイナルでは日本代表の渡邉由希子氏とともにステージに上がり、オリジナルカクテル「The G”aarde”n Cocktail」(ザ・ガーデン・カクテル)を披露した。ボルス・ジュネヴァにアーティチョークリキュール、フィノ・シェリー、ガリアーノを同量で配分したカクテルだ。
「ジュネヴァは通常サワーなどのベースに使われることが多いでしょう? だからこそ、違うことにトライしたかったんです」
フィニッシュには大地を感じさせるパフュームをひと吹き。爽やかな香りとともに口に含むと、ほのかに甘くスパイシーだ。ソティ氏はこう付け加えた。
「バーテンディングもバーという空間も、常に進化させていたいですね」
一見、隠れ家風のオーセンティックバーでありながら、バーの中身は常に進化し続け、変化し続ける。そんな「オー・ド・ヴィー」のエッセンスが、メルボルンっ子たちのハートをがっちりキャッチしているようだ。
“食べながら飲む”スタイルを追求し、常に進化し続ける隠れ家バーの動向から、今後も目が離せない。
ウイスキールームの棚でライトアップされたキープボトル。ウイスキーの種類は日本のものを含め今後さらに増やしていく予定とのこと
「The G”aarde”n Cocktail」(ザ・ガーデン・カクテル)。英語のGardenをオランダ語風にひねった名前の由来は、材料すべてにEarthy(土の香りのする)なものを使っているから。