デモンストレーションのトップバッターを飾ったのは、唯一の女性参戦者、ワルシャワ代表のマルゴルザタ・コルボウスカ氏。常に笑顔で接客しつつも、抹茶でリムドした水割りをつくる手は震えてしまい、このファイナルがいかに大きなプレッシャーとなっているのかが伝わってきた。デモンストレーションが終了すると、ジャッジは1カ所に集合し、審査を行う。この流れで、バーテンダー11名の審査が進められる。
続くはプラハ代表、ミロス・ダニヘルカ氏。水割りにアブサン専用のピッチャーを使用するなど、古き良き時代を感じさせるツールにこだわった。3人目はミュンヘン代表の、マキシム・キリアン氏。レシピ的にはクラシックに回帰しつつも、延べ棒型のアイスを使用するなど、ディテールが光った。モナコのブッダバーから参戦したジュリアン・マッソン氏は、ニッカウイスキーの歴史や各プロダクツの特徴をパーフェクトな知識で説明。ニッカがここまでヨーロッパに浸透していることに驚かされた。
5人目、ボグダン・ペトロフ氏は、ロシアでバーマンのトレーナーとして活躍する人物。期待が集まったが、なんと、すべてのオーダーをサーブする前にタイムアウト。限りある時間をいかに有効に使えるかも、バーマンに要求される技術のひとつだ。キスマーク付きの白いシャツで登場したのは、パリ代表のジョゼフ・アカヴァン氏。ニッカウヰスキーをフォークロアに打ち出すのではなく、伝統的なバー文化のなかにさらりと落とし込んだサービスは、シンプルながら強い説得力があった。
7人目のラスティスラヴ・セーヴェン氏は、ロンドン代表。水割りにリンゴのフレッシュジュースをプラスするなど、徹底したクリエーションで勝負。ストックホルムのアンドレス・レオン氏は、地元スウェーデンのリキュールを用いてカクテルメイキング。水割りにはジャスミンティーを使用するアレンジ。一方、アムステルダム代表のダヴィッド・トレンプ氏は、炭酸カートリッジやスモークガンなどのツールを使用し、モダンな味付けのクラシックカクテルをサーブした。マドリッドのカルロス・モレノ氏だけは、サービスにおもちゃを登場させ、笑いを誘うアプローチを見せた。最後の挑戦者は、ローマのダニエル・ジェンティリ氏。水割りの氷に黒海の海水をスプレーしステア。余分な水を捨ててから、オーソドックスな水割りをつくりあげた。
単に水割り、単に定番のウイスキーカクテルといえども、11人11色の興味深いアプローチを見せてくれた。メイド・イン・ジャパンのウイスキーが、ヨーロッパのトップバーテンダーたちによって新しく生まれ変わる瞬間を目の当たりにすると、ウイスキーのさらなる可能性を痛感せずにはいられなかった。
さて、栄えある「ニッカ・パーフェクト・サーヴ2011」の覇者はというと、パリ代表、ジョゼフ・アカヴァン氏が優勝! 僅差で2位につけたミュンヘン代表のマキシム・キリアン氏とともに、2012年にニッカウヰスキーの故郷である余市&宮城峡蒸溜所ツアーへと招待されることとなった。
『Ichi-go Ichi-e - 一期一会』
各バーテンダーたちは、このスローガンに対する回答を、この日のデモンストレーションで披露したことになる。これに対するジャッジの反応は、奇をてらわず、シンプルにおいしい水割りやカクテルをつくり、スマートな接客をしたバーテンダー2名への、高い評価だった。パーフェクトなサービスについて考えさせられる、実に興味深い結果といえるだろう。今後、世界中のバーテンダーたちは、ニッカウヰスキーを駆使して、果たしてどんな『一期一会』を演出してくれるのだろうか。