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「アサヒ ラグビースクール」第6弾は
北海道札幌市へ
雪国で初の体育館での開催!
早いスピードでスキルを磨く大切さを指導

北海道バーバリアンズラグビーアンドスポーツクラブ
(北海道・2023年2月18日)

2月の北海道としては暖かい土曜日の午後、Season2最後となる「アサヒ ラグビースクール」が開催されました。「アサヒビール・ラグビーアンバサダー」の五郎丸歩さんがラグビーを通じて子供たちと「気持ち高まる瞬間」を分かち合うために訪れたのは、認定NPO法人「北海道バーバリアンズラグビーアンドスポーツクラブ」が練習する北海道札幌市の「なの花記念体育館」。1970年代に発足したこのクラブは、北海道大学に留学していたニュージーランド人のマーク・イーリ氏が本場仕込みのトレーニングを教え、北海道在住のニュージーランド人を次々と勧誘してクラブの骨格を作っていき、その熱心さに魅せられた日本人ラグビー経験者が加わったとされています。今回の参加者たちが所属するジュニアの部は約20年前に設立され、幼稚園児から大人まで幅広い世代が所属するクラブです。

練習風景

続々と体育館に入ってきた体格のいい子供たち

雪のため外のグラウンドで練習ができないこの時期は、定山渓の屋内練習場か、「なの花記念体育館」での練習になります。今回の教室には40人以上が参加。続々と体育館に入って来る子供たちを見て驚いたのは、背が高くがっちりした体格の選手が多いこと。荷物を置いてすぐに仲間たちとウォーミングアップを始め、首のストレッチや、ラダーを使って小刻みに足を動かしながら前に進み瞬発力を鍛えるアジリティトレーニング、体をひねりながらパスをするロールパスなどで、しっかりと体を温めていました。

今回のゲストコーチは、17歳のときから五郎丸さんと一緒にプレーし、早稲田大学の同級生でもあるラグビー元日本代表の畠山健介さん。「限られた時間ですが、できるだけスキルを教えていきたいと思いますので聞きたいことはどんどん聞いてきてください」と五郎丸さんの挨拶に続き、畠山さんからも「17歳からラグビー日本代表としてプレーしてきました。短い時間ですが、よろしくお願いします!」という元気のいい挨拶で、スクールが始まりました。

練習風景 練習風景 練習風景

「声出し」に、うまい下手は関係ない

練習に入る前、子供たちはコーチと今日の練習テーマについて確認します。今日のテーマは「スペースにボールを運ぶ」。「スペースを見つけて走り込み、仲間に声をかけることを意識しよう」というコーチの指示に子供たちは「はい!」と元気いっぱいの返事。まずは、体幹を意識した走りの基本となるドリル、片足を大きく前に踏み出し、重心を下げて前に進んでいくレッグランジ、歩きながらの股関節回し、10秒間もも上げをしてからダッシュするといった動きを行ったあと、パスカットやパスセンスを磨くために3対1の「鳥かご」練習から始まりました。

早速練習に加わった畠山さんは、大きな声を発したり、パンパンと手を叩いたり、手をあげたりして、自身の存在やパスが受け取れる意思を仲間にアピールする姿を見せます。最初はパスカットやパス回しに必死で声が出ていなかった女子チームも、畠山さんの動きや動作に気づき、声が一気に大きくなりました。

4人1組でT字型に並び、2つのボールを使ってパスする「T字パス」は、「アーリーキャッチ」や「フォロースルー」を意識することが目的。「速く!もっと速く!」と声を掛けながら1つのチームを見ていた五郎丸さんはプレーを止め、「もっと距離をとろう」「時間がもったいないからキャッチしたボールを下に下げない」とアドバイスしました。「大事なのは受けとったボールをそのまま直線上に投げること。スピード感を持って隣の仲間に投げるために、キャッチするときの手の角度を意識して」と実際に子供たちに体感させながら教えていました。

この「T字パス」でも、「声を出すのはうまい下手は関係なくできるはずだ。練習で習慣にしないと試合ではできないよ!」と畠山さん。練習を全力で取り組むことの重要性を繰り返し訴えていたのが印象的でした。

練習風景 練習風景 練習風景 練習風景

早いスピードでスキルを磨くことの重要性

パスを走りながら実践的に行う「4パス」は、2チームに分かれて「早いスピードの中でスキルを磨く練習です。走りながらキャッチしたボールを下に下げないで、素早く直線上へパスすることにチャレンジしてみよう。ミスしても全然OK」と五郎丸さん。畠山さんからは「うまくいかなかったら考えて修正する。スタートするときに、内側にいる仲間に外側の手を見せるように前に出して」「先頭の選手は、相手の選手もパスを渡す仲間も見る。先頭は忙しいよ!ナイスナイス、いいよ、いいよ」「何に気をつけるんだ?『ハンズアップ』『味方を見る』『迷ったら仲間をサポートする!』」などの掛け声が響き渡り、振動で屋根に積もった雪が何度か落ちてくるほど選手たちは体育館を必死に駆け回りました。

オフェンスとディフェンスに分かれての3対2のパスでは、2チームに分かれ、どちらが多くゴールして点数を取れるかを競い合いました。「どのチームもやっている練習はみんな一緒。でも、早いスピードの中で声を出しながらトライを取りきれるチームとそうでないチームで大きな差がつきます。スピードを上げた実践的な練習の中で、トライを取りきるスキルを意識しよう」と五郎丸さんのアドバイス。最後はタッチラグビーを行い、五郎丸さんや畠山さんを交えた大人チームも混ざり、子供たち相手に手加減ナシのプレーが繰り広げられました。畠山さんはジャージの膝部分が破れるほどのスライディングをし、時折笑い声が聞こえながら、終始実践の中でスキルを磨く練習でした。子供たちにとって、とても集中した2時間だったと思います。

最後は五郎丸さんや畠山さんも一緒に円陣を組み、「スリーチアーズ フォー五郎丸さん、畠山さん、バーバリアンズ、Hip Hip!」と、感謝の気持ちを込めたエールの言葉を中学生のキャプテンが2人に贈り、練習は終了しました。

練習風景 練習風景 練習風景 練習風景

タックルが下手なのにラグビー日本代表になれた理由

子供たちが楽しみにしていたラグビー元日本代表への質問コーナーでさっそくあがった質問は、「タックルがうまくなる方法は?」。「気持ちだけで向かっていくのではなく、まずは正しいフォームをしっかり練習しないとケガをする。一方で気持ちも大事。体格の大きな選手が相手だと『怖い』『嫌だな』と逃げたくなります。でも、思考を切り替えて、チームのために体を張り続けてくれる仲間のためにも日々チャレンジしてほしい。チームや仲間のためにプラスになるようなプレーをしようと思ってチャレンジするしか、度胸がつく方法はないと思います」と五郎丸さん。「僕は手足が短いので、タックルできる範囲がたぶんここからここまでのエリア。このエリアだけは何が何でも守ろう、このエリア以外は仲間を信じようと思っていました」という畠山さんの回答には、五郎丸さんから「そのエリア、狭すぎないか?」とすかさず突っ込みが入り、笑いが起こりました。さらに畠山さんは、「タックルを上達させる方法についてよく質問を受けますが、見てください、僕たちタックルが下手なのにラグビー日本代表になれました。タックル以外に長所があったからです。いいですか、長所を伸ばしつつ、タックルの練習も諦めずに頑張ってください」とエールを送りました。

「キックをうまくする方法は?」という五郎丸さんへの質問には、「丸いボールでまずは芯をとらえる練習をすること。それからラグビーボールで練習してみてください。次にボールを飛ばしたい方向に自分の重心を持っていけばその方向に飛ぶという原理原則に従って、飛ばした方向に自分の身体を持っていくように意識しながら練習してください」とアドバイスがありました。

練習風景 練習風景

「我慢すること」と「努力すること」の違い

次に、「どんなことを心がけながら練習や試合に臨んでいるか」という質問です。「試合当日までに、いつまでにどんな練習をしてスキルを磨き、何を食べて身体を整えてなど、すべての準備を終えて、不安がない状態にすることが大事です。準備をせずに本番を迎えるのは、チャレンジではなく冒険です。なので、試合当日にチャレンジできるような準備をしっかりしましょう」と五郎丸さん。

畠山さんからは「僕は試合当日を迎える日も、試合時間残り2分という状態でも、勝つことしか考えていませんでした。でも、これはおすすめできません。勝ちにこだわりすぎると、「なんであんなプレーするんだよ!」と仲間のせいにしてしまうからです。チームスポーツだからこそ、『バーバリアンズは試合を通じて何をしたいのか』をもっと話し合う必要があると思います」。また、「練習を見ていて思ったのが、ミスしたときに『もっとボールを見て』などのアドバイスはありましたが、仲間がいいプレーをしたときに『ナイスプレー!』といった褒める掛け声がなかったよね。褒められるとやはりうれしいので頑張れるし、試合も楽しめるかもしれない。そんなチームの関係性を日々の練習で作って、本番に臨んでください」とも話してくれました。

最後はキャプテンから「ラグビーのキツさや辛さを乗り越える原動力は?」という質問。「何か嫌なことがあった?(笑)」と五郎丸さんは笑いを誘いながら、「やめるというオプションはいつでも自分で選べます。いったんチャレンジして、嫌だけどまだチャレンジできると思えれば続ければいいし、本当に辛ければやめればいい。元気の源は『食べること』です」。

さらに、「『我慢をすること』と『努力をすること』は違う。与えられた指示をただ耐えて取り組むのではなく、自分の頭で考えて必要だと思うことに向かって正しい努力をしてほしいです。そうすると人のせいにしなくなる。コーチから指示された練習も、『この練習はこのために必要だ』と自分の中で変換して、チャレンジするようにしてください」ともアドバイスしてくれました。

畠山さんからは、「僕はラグビー以外で家族に褒められたことがなかったし、自分の存在を証明できなかったので続けていました。兄弟や他人と比べられて自己肯定感が低かったので、ラグビーだけは絶対に負けたくないという気持ちで続けられたんです。やめていたら家に引きこもっていたかもしれません。これから先、さまざまな場面で人と比較されるケースが出てくると思うけど、他人の評価は気にせず、自分が好きかどうかを一番に優先して続けてほしいです」とお話ししてくれました。

最後の挨拶では、「最後に伝えたいのは、練習ではレフリーや大人を気にしないで思いっきりプレーをしてほしいということ。100%のプレーをやろうと思えば、僕みたいにジャージに穴があきます(笑)。ケガしないように、怒られないようにと自分を抑えて練習すれば、成長は止まってしまう。僕たちがいない来週もその次の週も『畠山さんがこんなことを言っていたな』と思い出して、思いっきりラグビーを楽しんでほしい。」と畠山さんがアドバイスをくれました。

五郎丸さんからは、「今日の練習で一番大事だったことは何?そう、スペースにボールを運ぶこと、パススキルも大事だよね。でも、タッチラグビーも「3対2」もチャンスが何回もあったけれどトライがつながらないのはなぜだろう。チャンスが訪れたときに、パスやフォローを100%発揮できるのがいいチームで、そうでないチームと大きな差になります。簡単なようですごく難しいですが、高い目標を持ってチャレンジしてください。リーチ・マイケル選手のような素晴らしい選手が北海道から出てきて世界で活躍することを、我々は期待しています。ぜひ頑張ってください。今日は短い間でしたが、ありがとうございました!」という挨拶とともに、スクールは終了しました。

練習風景 練習風景 練習風景

世界で戦った選手の言葉は子供たちへの浸透率が高い

スクールを終えた中学生グループは、「スキル的な指導はもちろん精神的なことに対する指導も、さすが世界で戦ってきた人たちだなと勉強になりました」「全力で練習すること、パスのスキルを上げること、声かけのレベルを上げることを学びました。ラグビーが楽しくなったので、高校に進学しても頑張りたい」「週1回しか練習がないので、練習以外の過ごし方もプレーの上達につながるように意識したいです」などと話してくれました。

練習風景をじっと見ていた、北海道バーバリアンズジュニア代表の熊木勝彦さんは、「世界で戦ってきた人たちの言葉は重くて、子供たちへの浸透率が私たちコーチ陣とは異なりますね。一度コロナでラグビー教室が延期になって、子供たちも開催されることを楽しみにしていたので、本当に感謝しています」と感想をいただきました。

「道内の高校ではラグビーができる機会が減ってきています。高校でも継続する子供たちを増やし、そのための環境を整えていく必要がある。うちのコーチ陣は約60人いますが、コーチの資格を取ってくれた、メディカルスタッフの保護者もいます。道内はおいしいモノがたくさんあり、栄養面でも保護者の方に協力していただいている。勝ち負けから学ぶことも大切ですが、健康やケガに気をつけながら、仲間との絆を深めていくなど人間性を高め、『楽しいから続けたい』と思える場をこれからも提供していきたいです」とも話してくださいました。

ラグビースクールを終えた畠山さんは、「このチームは骨格がしっかりしている選手が多く驚きました。でも、体格だけを生かしたプレーだけでなく、『スペースを見つける』などのテーマを決めて練習に取り組み、繊細な動きも磨いている。雪による練習の制限で色々と工夫されているのかもしれませんが、ユニークなチームだなぁと思いました。一番上のクラスに全国クラブラグビーフットボール大会で優勝したチームがいることも面白いなと思っていて、年齢とともにどのようにラグビーと関わっていけるのかといったイメージが描きやすく、1つのいいモデルケースだと思います。また、昔に比べて女子も増えて頑張っているという印象を受けます。今日の女子たちも大きな声を出して頑張っていた。この中から代表になる子が出てくるのが楽しみですね」とチームの印象を話してくれました。五郎丸さんも「すごく純粋にラグビーが好きなんだなという印象を受けましたね。何よりもバーバリアンズのコーチの皆さんが声を出して楽しんでいた。間違いなく子供たちにいい影響を与えていると思います」とチームの雰囲気の大切さを話してくれました。

体育館の玄関では、最後まで残っていた子供たちや保護者が雪道に並び、五郎丸さんと畠山さんをお見送りしてくれました。「気持ち高まる瞬間」を分かち合った子供たちが名残惜しむなか、2人は楽しかった雪国を後にしました。今後も五郎丸さんが皆さんのチームにお邪魔します。お楽しみに!

練習風景 練習風景