「アサヒ ラグビースクール」第4弾は
福岡県春日市へ
五郎丸さんの脅威だったチームに
早稲田時代の主将と里帰り指導!
(福岡県・2022年10月15日)
雲一つない秋晴れのもと、第4回目となるアサヒビール ラグビースクール(season2)が、10月15日に開催されました。今回足を延ばしたのは、アサヒビール・ラグビーアンバサダーの五郎丸歩さんの地元、福岡県にある春日市。多くの応募チームから選ばれたのは、九州大学筑紫キャンパス内のグラウンドを練習拠点とするチーム「つくしヤングラガーズ」です。1977年の創部から45年の歴史を持ち、日本代表選手も生まれている実績と伝統のあるチーム。そして今回のゲスト指導者は、五郎丸さんが早稲田大学ラグビー蹴球部で副主将を務めたときの主将であり、この「つくしヤングラガーズ」出身の権丈太郎さん(NECグリーンロケッツ東葛コーチ)。このチームでラグビー教室が実施されることが決まったあと五郎丸さんは、すぐに権丈さんにゲスト講師を依頼したと言います。権丈さんにとって20年以上ぶりに古巣への里帰りになった今回のスクール。ラグビーを通じて、どのような出会いや「気持ち高まる瞬間」があったのでしょうか。
五郎丸さんにとって脅威だった「タイガージャージ」
朝9時、広大なグラウンドに続々と集まってきたのは、幼稚園児から中学生までの156人の子どもたち。ウォーミングアップの前に、当日を迎えた感想を子どもたちに聞くと、口々に「うれしい!」「五郎丸さんに会えるのを楽しみにしていた」と教えてくれました。指導を受けたい内容で最も多かったのは、「キックがうまくなるコツ」。やはり2015年のラグビーワールドカップでの印象が強く、「リアルでは見ていないけどYouTubeで見た!」という声も。「タックルの仕方」「ディフェンスの2次攻撃について」「筋量を増やし、体を大きくする方法」など、自分の苦手なプレーを鍛えたい思いや、今興味があるキーワードを積極的にあげてくれました。小学6年生の女の子は「練習はしんどいときもあるけれど、力を合わせてトライできるのは楽しい。厳しさと楽しさのメリハリがあるチームです」とラグビーとチームの魅力も教えてくれました。中学校に進学しても続けたいそうです。
学年ごとのグループに分かれてランニングをしたり、ランニングパスをしたりして体を温め、10時にいよいよスクールが開講しました。地元から生まれた2人のヒーローを目の前にすると、興奮気味に目をきらきら輝かす子どもたち。幼い頃からこのチームの存在をよく知り、戦ったこともある五郎丸さんは、「幼い頃、強豪だったタイガージャージを見るのが嫌でね。ここで試合をしてケガをした思い出もあります(笑)。そのときに戦ったのが君たちのOBで、早稲田大学ラグビー蹴球部で一緒のチームだった権丈くんであり、今回のゲストです。君たちの練習に参加させてもらいますので、教えてほしいことをどんどん聞きに来てください!」と思い出をまじえた挨拶をされました。権丈さんからは「幼稚園の頃からこのチームでラグビーを始め、20年以上ぶりにこのグラウンドに戻ってきました。早速みんなの元気な声を聞いて、こちらがエネルギーをもらっています」と挨拶。「よろしくお願いします!」との子どもたちの元気な掛け声で、練習が始まりました。
試合をイメージして練習することの意味
今回は、五郎丸さんと権丈さんが2人そろって、学年別に分かれたグループを回る方式。まず2人は、幼稚園児から小学2年生までのグループに参加しました。大歓喜の子どもたちは、2人の足元にくっついてべったり。みんなのテンションが十分に上がったところで、五郎丸さんと権丈さんが鬼になり、腰につけたタグを取る「タグ取り鬼ごっこ」がスタートしました。2分間でしたが、「キャー」と声を上げて笑いながら逃げ回る子どもたちと、同じく笑いつつも息を切らす鬼たち…。「ラグビーは楽しい」と思ってもらえるような遊びの時間を楽しみました。
翌日に新人戦を控えた中学生グループでは、3対1や3対2で行うランニングパスによるハンドリング練習に2人が参加。五郎丸さんはしばらくじっと練習を見ていましたが、集合をかけ、「もっとダッシュしてスピードを上げて、試合と同じシチュエーションで練習をしないと意味がないよ」とアドバイス。その言葉でスイッチが入ったのか、子どもたちのスピードは一気にアップ!「1人目、もっとしかけてこい!」「そうそう、ミスしてもいいよ!」と五郎丸さんや権丈さんの熱い掛け声に背中を押されるかのように、子どもたちの集中力がぐんぐん高まっている様子がうかがえました。
練習後、「試合でチャンスが巡ってくるのは数回しかありません。そのチャンスをつかむためには、試合をイメージした強度の高いチーム練習をしてください。自分の足りないスキルは、チーム練習の前後の自主練で鍛えよう」という五郎丸さんの指導も印象的でした。
五郎丸さんがキックした青空を高く舞うボールをキャッチ!
小学3年生のチームでは、みんなが五郎丸さんに期待していた「キック」の練習。キックといっても、キャッチする側の練習です。五郎丸さんがキックしたボールをキャッチできると知り、我先にとみんな積極的に手を挙げてチャレンジしました。1人の子どもがキャッチに大成功すると、保護者を含めた周囲からは拍手が沸き起こりました。でも、ほかのみんなはなかなか難しそう…。そこで、権丈さんもキャッチの見本を見せ、「脇を締める」「手のひらを高くあげてキャッチする」という2つのポイントを教えました。五郎丸さんも「ボールを卵だと思って。割れたらいかんやん。迎えにいってすーっとキャッチする」とボールを抱えながらアドバイスしました。
小学4年生や5年生のチーム練習では、ディフェンスのコンタクト練習やアタック練習。みんなヘッドギアをつけ、レベルの高いコンタクト練習が繰り広げられていました。権丈さんからは「前でぶつかっている選手は、味方の声を聞き取りにくい。聞こえるように、してほしい動きを大声で叫ぼう」「攻撃で一番大事なことは、ボールを持っている人が前に出ること」などのアドバイスがありました。
最後に、小学6年生のグループでは、2人が別々のチームに分かれてタッチフットゲームに参加。権丈さんが「左だ!左」などと絶叫しながら指示する様子を見て、子どもたちの掛け声もどんどん大きくなっていきました。予定より時間を少しオーバーして、2時間以上の白熱した指導は終了。10月とは思えない刺さるような日差しと、ふだん間近では見られない日本代表レベルのラグビーを肌で感じる練習により、子どもたちはもちろん、五郎丸さんや権丈さんも汗だくでした。
ラグビーで出会える仲間は一生の宝物
クロージングでは、「いろんなことを教えたけれど、まずはラグビーを楽しむことが何よりも大事です。その次に、特に中学生は、試合を想定した練習を行いスキルとスピードをしっかり磨いてください。そしてみんな、今一緒に練習している仲間を大切にしてください。ラグビーを続ければいろんな仲間に出会えます。もしかしたら外国人の仲間もできるかもしれない。赤と白のジャージに袖を通し、ラグビーワールドカップで戦っている姿を期待しています」と、五郎丸さんからエールが送られました。
権丈さんからは「久々に故郷に戻り、昨夜地元のラグビー仲間とお酒を交わしながら、このチームで練習した頃の思い出話に花が咲きました。どうかしんどい練習を共に経験している友だちを大切にしてください。このままラグビーを大好きでいてほしいし、楽しんで、頑張ってほしいと思います。本当に楽しい時間を過ごすことができました。今日はありがとうございました!」というお礼の言葉がありました。チームからは感謝の気持ちを込めて、45周年の記念に作られたTシャツが2人に手渡されました。
スクール終了後、みんなが感想を教えてくれました。県代表に選ばれた中学3年生の男子からは、「五郎丸さんや権丈さんのアドバイスで、ランパス練習のスピードが一気に上がったことを体感しました。試合をイメージして練習することの大切さを学びました」。その横から、「モチベーションが上がったので明日の新人戦、頑張ります!」という後輩の声も。小学生の男子からは「ディフェンスのときに『前に出ていないよ』、と自分の悪いところも教わったのがよかったです」と話してくれました。
長年このチームに携わり会長である石川英俊さんからは、ほぼ負けなしだった当時のチームで権丈さんがいかにすごい選手であったかという思い出話とともに、今日の練習について、「やっぱり2人にはオーラがあるから、子どもたちの聞く態度がふだんとまったく違うと感じました。昔は厳しく叱って教えるような時代もありましたが、今は分かりやすく教えることが重要になります。2人の指導はとても分かりやすかった。子どもたちも、指導者もいい刺激になったと思います」と話してくださいました。
コンタクト練習ができる名門チームの強さ
今回のラグビースクールを終えた権丈さんからは、「自分が育ってきたチームで教えるのは光栄で、うれしい気持ちしかなかったですね。僕が子どもの頃は、ラグビー好きのボランティアの方々が指導してくださり、練習はきつかったという記憶しかないですが、練習後にみんなで遊びにいった楽しい思い出もあります。ラグビーによる絆は強く今でも仲間とは連絡を取り合っていて、このチームで育ってよかったと思います。子どもたちを見ていて、とにかく元気だし積極的に手をあげて質問するし、そんな雰囲気もこのチームが作り出しているのかなと感じました。大人が取り組むような難しい練習にもチャレンジしていて、純粋にすごいなと思いましたね」と話してくださいました。
五郎丸さんも、チームの印象を話してくださいました。「今日は実家から来たのですが、僕が幼い頃からなじみのある名門チームで指導することができ、自分自身にとってとても勉強になりました。このチームの特徴は、コンタクトといった強度の高い練習ができていること。パスなどのスキルの高い小中学生のチームはありますが、タックルなどのコンタクト練習は危険を伴うので、取り組まないチームも多いです。でも、実績のあるコーチ陣がラグビーの基礎を子どものときからしっかり教え込んで、安全面に配慮しながら取り組んでいる。少しアドバイスすると、スピードが一気に上げられるスキルの高さも感じました。僕らが来たことが刺激になって、いつもとは違うマインドでの練習を体感してくれていたのなら、うれしいと思います」。
子どもたちも、故郷での指導となった五郎丸さんや権丈さんも「気持ち高まる瞬間」がたくさんありました。次回、五郎丸さんが訪れるチームはどこでしょうか。どうぞ楽しみにお待ちください!