アサヒビール株式会社
2009年 アサヒビールグループ事業方針
次代に向けた成長基盤・収益基盤の確立、
新価値の提案による需要創出を目指す
アサヒビール株式会社(本社 東京、社長 荻田 伍)は、2009年、前身である大阪麦酒の 創業から120周年、朝日麦酒としては創立60周年を迎えます。アサヒビールは本年、次代に 向けた成長基盤・収益基盤の確立と、これまでの延長線上にない新価値の提案にグループを あげて取り組み、2009年を“第三の創業”と位置づけ、一段の飛躍を目指します。
国内食品業界は、市場の成熟化とともにお客様の価値観やニーズの変化が刻々と進んで います。アサヒビールグループは、こうした環境下において、お客様の変化を基点にした新たな価値提案に、商品開発、営業活動からグループ経営まで徹底して取り組み、需要を創出し、 グループの再成長を実現することを目指します。
海外においても、グループの将来像の確立を見据え収益基盤の整備を進めていくとともに、積極的な事業投資も検討・実行していくことで、第3次中期経営計画で掲げた「“食と健康”の領域で、アジア地域を中心に、成長性溢れるリーディングカンパニーを目指す」ビジョン達成に 向け前進します。
また、企業に対する社会的要請として重要度を増している「環境」「食の安全・安心」については、グループをあげた対応や仕組みづくりを今まで以上に進め、お客様の求める品質やサービスの高度化にお応えしていきます。
昨年(2008年)の概況
国内の食品業界は、原油や原材料の高騰をきっかけとした価格上昇、世界経済の減速の 影響を受けた景気の減退などにより、厳しい局面が続いています。
酒類業界においては、値ごろ感の高まった新ジャンルが健闘したものの、ビールや発泡酒のマイナスが予想以上であったことから、ビール類全体の市場は4年連続の前年割れとなった ものと推定されます。ビール類以外の酒類カテゴリーを見ても、全般的に横ばいや減少傾向が見られ、市場の成熟がいっそう進む結果となっています。
■当社酒類事業の概況
アサヒビールは昨年、それぞれの酒類カテゴリーの市場性に応じた商品提案や販促を展開し、2008年の目標として掲げた「ブランドの育成・強化」に徹しました。ビール類においては、販売数量は前年を下回ったものの、新ブランドの育成や既存ブランドの強化に成果を上げることができたほか、価格改定やマーケティング資源の重点投資による収益性の改善を進めることができ、環境変化に左右されない基盤づくりを進展させました。総合酒類においても、出荷価格や取引制度の見直しを進めることができ、酒類全般をとおして、もうひとつの目標として掲げていた 「収益構造改革」にも一定の成果を上げることができました。
ビールにおいては、主力の『アサヒ スーパードライ』のブランド価値向上に全社を挙げて取り組みました。その結果、『スーパードライ』の年間販売数量は20年連続となる1億箱超※1を達成し、ビール市場における存在感をいっそう高めることができました。ビール全体のシェアも、11月末時点で過去最高となる50%を超えており※2、年間を通じて大きなご支持をいただくことができました。
※1) ビール類の箱数は、1箱を大びん633ml×20本換算で表記。以下同。
※2) 大手5社課税出荷数量統計による
発泡酒では、“糖質ゼロ”発泡酒を各社が続々と投入する中、一昨年に発売した『アサヒ スタイルフリー』が計画を上回る実績を上げました。『スタイルフリー』が業界に先駆けて提案した “糖質ゼロ”※3という新たな切り口は、多くのお客様からご支持をいただき、酒類業界のみならず食品業界にも広く波及するものとなりました。
※3) 当社の場合、栄養表示基準に基づき、糖質0.5g(100ml当たり)未満を「糖質ゼロ」としています。
新ジャンルでは、昨年発売した『クリアアサヒ』が大きな支持をいただき、初年度の販売数量は1,400万箱超となりました。昨年の新ジャンル市場伸長の要因となった“麦芽を使用した新ジャンル”(「リキュール(発泡性)」規格)拡大の牽引役として、市場の活性化に大きな役割を 果たしました。
その他の酒類カテゴリーでは、全般的にマイナス基調の市況の中、当社商品群も前年並か微減の結果となりましたが、それぞれの分野における主軸ブランドは市場での存在感を高めることができました。中でも、洋酒における当社最大のブランド『ブラックニッカ クリアブレンド』は、2年連続で増加しており、ウイスキー市場が長期にわたって低迷を続ける中、成長を維持することができました。また、焼酎においては、基幹ブランドの『かのか』が、発売以来15年連続のプラス成長を維持し、お客様のご支援とご理解をいただくことができました。
■グループ事業の概況
グループ経営は、昨年より、酒類・飲料・食品薬品・国際の4事業部門による経営体制とし、 ガバナンスの強化を進めました。各事業において、グループ間シナジーや外部とのアライアンス、 積極的事業投資によって成長を促進し、グループ経営の本格化が実現しています。
飲料事業においては、アサヒ飲料の主力ブランドが着実に成長したほか、カルピス(株)との 自動販売機事業の完全統合などによって、飲料業界が前年並で推移する中、売上を大幅に 拡大させることができました。食品薬品事業においては、フリーズドライ食品の最大手である 天野実業を傘下に迎え入れ、事業基盤強化を大きく進めることができました。
国際事業においては、ビールの生産拠点を新興国ロシアにも広げたことで欧州での販売が急拡大したほか、中国を中心としたアジアでの販売が堅調に推移し、売上規模の拡大をはかることができました。
本年(2009年)の酒類事業の取り組み
酒類の国内消費は昨年に引き続き厳しい状況が予想されます。アサヒビールは本年、お客様を基点としたマーケティングに徹し、既存ブランドの価値向上と新価値提案による需要の創出に挑戦します。ビール類においては、『スーパードライ』を中心とした既存ブランドを強化するとともに、今までにない飲用価値の提案によって支持拡大を目指します。総合酒類においては、これまで進めてきたブランドの育成・強化と収益性向上に引き続き取り組みます。また、グループ内外におよぶ共同調達やグループ生産体制再構築の検討を進め、経営環境の変化に左右されない収益基盤のさらなる強化を目指します。
■ビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)での取り組み
ビールでは、主力の『スーパードライ』のブランド育成に注力します。飲食店における樽生ビールの品質向上活動、店頭での鮮度向上活動に継続して取り組んでいくほか、ご家庭での飲用 シーンを盛り上げるさまざまな販促策を年間を通して実施し、広告・売り場から継続して『スーパードライ』の“うまさ” “飲用価値”を発信します。また、これまで『スーパードライ』の販売を通じて一部の地域で実施してきた環境保全や地域貢献をテーマとした社会貢献を、全国に広げていきます。商品を通じてお客様とともに社会貢献を推進していくことで、お客様に新たな『スーパー ドライ』の飲用価値をご提案する考えです。
発泡酒においては、『スタイルフリー』のさらなるブランド育成と、新たに発売する『アサヒ クールドラフト』のご提案を通して、発泡酒市場を再度盛り上げていきます。『スタイルフリー』は、 本年も“おいしい糖質ゼロ”※3の独自の価値をより多くのお客様に訴求していき、『クールドラフト』は、アサヒビールの技術の粋を結集し発泡酒市場に求められるキレ味を新たに提案します。
新ジャンルでは、業界を代表するブランドに成長した『クリアアサヒ』のさらなる育成をすすめるとともに、2月には『アサヒ オフ』を発売します。麦芽を使用した新ジャンルにお客様のニーズが集まる中、新たに「糖質オフ」「プリン体オフ」といった価値を提案することで、新ジャンル市場の活性化を本年も引き続き牽引します。
■焼酎、低アルコール飲料、洋酒、ワイン 各分野での取り組み
焼酎では、甲乙混和焼酎のトップブランドである『かのか』の販促を再強化するとともに、いも焼酎の品質保証体制を強化し、ブランドの再生に努めます。
低アルコール飲料では、既存ブランドの強化とともに、お客様のニーズに即してカロリーを業界最少クラスに抑えた新商品『Slat(すらっと)』のブランド化に努めます。オリジナリティ溢れる商品提案を通じて、お客様が低アルコール飲料に求める“選ぶ楽しさ”をご提供していきます。
洋酒では、国産ウイスキーの代表的ブランド『ブラックニッカ クリアブレンド』を本年も重点強化していきます。また、海外からも高い評価をいただいている余市ブランドやシングルモルトウイスキーからの情報発信も強化し、需要の活性化に努めます。
ワインについては、国産ワインでは酸化防止剤無添加、有機ぶどう原料に好評をいただいている『サントネージュワイン』のブランド強化、輸入ワインでは、世界的にもブランドが確立されている商品群の提案を中心に進めていきます。
本年(2009年)のグループ事業の取り組み
アサヒビールグループは、次代に向けた成長基盤・収益基盤の確立に向けて、酒類・飲料・食品薬品・国際の4事業それぞれの強化のほか、事業の枠にとらわれない最適生産体制の構築、バリューチェーンの最適化、グループを横断した人材登用によってシナジーを促進し、経営基盤強化を進めます。また、ダイバーシティ推進の一環として、本年はとくに女性活躍推進に優先的に取り組み、企業力向上に努めていきます。
飲料事業においては、中核のアサヒ飲料、チルド事業のエルビー2社による既存事業の成長を進めるとともに、事業全般の一段の成長を目指した積極的投資も検討・実行し、成長戦略を推進していきます。
アサヒ飲料は、主力ブランド『三ツ矢』『ワンダ』『十六茶』の一層の強化、成長分野における ブランドの育成・新提案を進めていきます。昨年、台数を飛躍的に増やし約23万台体制とした自販機においては、新会社アサヒカルピスビバレッジによって事業を整備し、オペレーションの効率化、ルートの合理化など効率的運営を進めます。また、グループシナジーによる調達、 生産、物流面での効率化も同時に進め、収益構造の強化をはかります。
食品・薬品事業においては、アサヒフードアンドヘルスケア、和光堂を中心に、健康食品・ サプリメント、菓子、カップスープ、乳幼児食品といった領域において将来に向けたブランド確立を進めていきます。研究開発部門においてもグループシナジーを発揮し、新価値・付加価値の提案力をさらに高めていきます。また、食品全般において、昨年グループに加わった天野実業とのシナジーを早期に実現し、商品開発力の向上、事業の飛躍をはかっていきます。新たな業務提携についても引き続き検討していきます。
国際事業においては、新規の事業投資や提携も視野に入れながら、既存事業の基盤強化と収益性の向上に努めます。中国におけるビール事業では、市場競争が高まる中で各社の勝ち残りに向けた競争力強化を進めます。また、飲料事業においては、飛躍的な成長を遂げている中国の康師傅飲品控股有限公司への経営サポートを本年も継続していくほか、オーストラリアにも事業基盤を構築し、グループの将来像に向けた強化を進めます。