アサヒビール株式会社
2008年 アサヒビールグループ事業方針
「ブランドの育成・強化」「収益構造の改革」「飛躍的成長への投資」により、
グループの成長軌道の確立を目指す。
アサヒビール株式会社(本社 東京、社長 荻田 伍)は、2007年から09年までの3ヵ年を期間とする第3次グループ中期経営計画に取り組んでいます。計画では、「“食と健康”の領域で、アジア地域を中心に、成長性溢れるリーディングカンパニーを目指す」ことを長期ビジョンに掲げ、実行期間の3ヵ年で「グループの新たな成長軌道」を確立することを目指しています。
2008年は、中期経営計画の2年目として、「ブランドの育成・強化」「収益構造の改革」「飛躍的成長への投資」をキーワードに、グループ経営体制において酒類・飲料・食品薬品・国際の各事業単位でのガバナンスの強化を進めるとともに、既存事業の自立的な成長と収益性の強化をはかります。さらに、昨年おこなったアサヒ飲料(株)の完全子会社化への取り組み等をベースに、グループ事業の飛躍的な成長に向けた外部との連携や事業取得などを積極的に検討・実行していきます。
2007年の概況
国内の酒類・食品業界は、市場の成熟を背景とした合従連衡をはじめ、原油や原材料の高騰など、経営環境に大きな変化をもたらす動きが加速した年となりました。
酒類業界では、ビール類の市場において活発な新商品提案がなされましたが、結果として新ジャンル市場が引き続き増加傾向を維持したものの、ビール類全体の市場は前年を若干下回るものとなり、またビール類以外の酒類カテゴリーを見ても、前年まで成長を遂げてきた低アルコール飲料市場が一服するなど、総じて横ばいから減少傾向が見られました。
■当社酒類事業の概況
アサヒビール(株)は昨年、商品を通じて「お客様の満足を追求する」という原点に立ち返り、それぞれのカテゴリーの市場性に応じた施策の実施や、新たな価値の提案を目指した商品展開を積極的におこないました。
ビールにおいては、主力の『スーパードライ』が昨年3月に発売20周年を迎えたことを契機に、さらなるブランド価値の向上、ご支持の拡大に全社をあげて取り組みました。その結果、お客様がブランドを選択する際の指標を着実に向上させることができ、販売数量も夏場の最盛期以降は缶商品を中心に好調に推移しました。『スーパードライ』の年間販売数量は19年連続1億箱※超を達成し、引き続き大きなご支持をいただくことができました。
発泡酒では、『本生』ブランドの強化と、糖質をゼロ(*)とした『スタイルフリー』の提案によって、発泡酒市場の多様化に対応したラインアップ構築を進めました。それによって、当社発泡酒は前年比2ケタ増を達成し、市場が前年を下回って推移した中、お客様からの高い評価をいただくことができました。中でも『スタイルフリー』は、年間販売箱数が当初予想を大きく上回る830万箱※となり、“糖質ゼロ発泡酒”という新たな市場を確立させることができました。
新ジャンルでは、リニューアルした『極旨』や、大麦由来の原料にさらにこだわった新商品『あじわい』によって、麦芽を原料に使用したリキュールタイプの市場の活性化を牽引しました。
(*)栄養表示基準に基づき、糖質0.5g(100ml当たり)未満を「糖質ゼロ」としています。
※販売箱数は1箱を大びん633ml×20本で換算
その他の酒類カテゴリーでは、基幹ブランドが堅調に推移した低アルコール飲料や、輸入ワインが好調であったワイン部門が、それぞれ前年実績を上回りました。中でも、カゴメ(株)との共同開発商品『トマーテ』は、“野菜を使用した低アルコール飲料”という新価値の提案に評価をいただき、両社の目指す“新たな市場の開拓”を実現することができました。
市場の縮小傾向が続く甲類焼酎やウイスキーを含む焼酎・洋酒では、前年実績を下回る結果となりました。しかしながら、焼酎においては『かのか』が発売以来14年連続となる2ケタ増の成長を持続させ、また洋酒においてはリニューアルによって勢いを増した『ブラックニッカ クリアブレンド』が前年比5%増と好調に推移するなど、それぞれの主軸ブランドの成長を実現することができました。その他、いも焼酎、シングルモルトウイスキーといった拡大基調にある分野においても、本年以降に繋がる成果を上げることができました。
■グループ事業の概況
グループ事業においては、酒類事業に次ぐ第二の柱である飲料事業を中心に成長への基盤整備をおこなうとともに、グループ外との提携を進めました。
カゴメ(株)との業務・資本提携においては、商品開発の他、研究開発、調達、生産、販売、サービスといったアサヒビールグループの事業活動全般での協力体制を構築しました。
12月にはアサヒ飲料(株)がカルピス(株)との共同出資によって自動販売機事業を運営する新会社を立ち上げ、自販機の稼働台数増によるスケールメリットを売上・利益の両面に貢献させていく枠組みを完成させました。
こうしたアライアンスを進めると同時に、アサヒ飲料(株)の完全子会社化に着手し、「グループの成長軌道の確立」に欠かすことのできない飲料事業の飛躍的成長に向けた着実な一歩を踏み出しました。
この他、3月から順次、アサヒビール(株)茨城工場が低アルコール飲料や清涼飲料の製造を開始し、新たに多品種生産工場としての稼動を始めました。それとともに、アサヒ飲料(株)の関東地区の物流機能を集約させ、グループの生産・物流体制の最適化に着手しました。
2008年のグループ事業方針
国内の食品業界は、原材料・燃料価格の予想を上回る高騰、グループの垣根を越えた事業取得や提携といった合従連衡の動きなど、昨年から急速に顕在化した大きな変化が、ますます本格化するものと考えられます。
また本年は、原材料高騰にともなうビール類の価格改定が予定されており、店頭価格の上昇がビール類の消費動向や他の酒類カテゴリーの消費にどの程度影響するかなど、酒類市場には不透明な要素も残ります。
こうした環境下において、アサヒビールグループの各事業が、中期経営計画の目標達成に向け着実な成果を上げるため、2008年は、グループのガバナンス体制を酒類・飲料・食品薬品・国際の4事業別の視点で再構築するとともに、「ブランドの育成・強化」「収益構造の改革」「飛躍的成長への投資」の3つをキーワードとしたグループ経営を進めます。
「ブランドの育成・強化」
グループ各事業で、お客様のライフスタイルの変化にあわせた新たな価値提案をすすめ、各領域で「ブランド」という形で具現化していきます。酒類では、成果を上げてきた商品開発プロセスに、新たな顧客洞察手法やクロスファンクションチームによるコンセプト開発などを加え、お客様から継続して支持をいただける商品、ブランドの開発をさらに推進します。グループ事業においては、昨秋事業に直結した形に再編成したグループ研究開発体制による成果や、提携を行なうグループ外の力も活用し、展開領域での新たな価値提案を強化します。
「収益構造の改革」
グループ各事業において、経営環境の変化に左右されない収益構造のいっそうの強化に取り組みます。構造改革の枠組みは、事業会社ごとから、各事業別・グループ全体の視点に転換し、調達・生産・物流・販売にわたる事業全般で見直しをはかります。昨年より順次スタートした茨城工場の多品種生産体制は、本年1月よりPETボトルの内製化設備が稼動するなど、グループの生産・物流体制の最適化構築が着実に進んでおり、本年もこうした取り組みをさらに推進していきます。
「飛躍的成長への投資」
各事業における「ブランドの育成・強化」「収益構造改革」による自立成長に加え、グループの将来像の確立に向けた成長への事業投資や戦略的提携を積極的に検討、実施していきます。特に、昨年、事業の飛躍的な成長に向けてアサヒ飲料(株)の完全子会社化を進めた飲料事業については、積極的な資源配分を行なっていきます。
2008年の酒類事業の取り組み
酒類事業においては、商品開発力の強化にもとづくブランド構築を、それぞれのカテゴリーにおいて進めていきます。また、それを下支えする営業体制の強化、収益性の向上にも取り組んでいきます。
■ビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)での取り組み
ビールでは、昨年推進した『スーパードライ』の販促活動・情報発信によって得られた財産を本年につなげるとともに、プレミアムビールの家庭用市場での強化に取り組みます。
『スーパードライ』では、「心理面のベネフィット」を訴求する広告の展開や、それに連動した消費者キャンペーン・店頭販促などを通じ、飲用価値を今一度明確にお伝えしていくことで、20年にわたり培ってきた“お客様との絆”をさらに深めていきます。
発泡酒においては、基幹ブランド『本生ドラフト』をリニューアルし、当社の発泡酒中核ブランドとしての位置付けを明確にしていきます。また2年目を迎える『スタイルフリー』は、“糖質ゼロ(*)”の特長と、雑味のないさっぱりとした味わいの両面を引き続き訴求していくとともに、コミュニケーションを強化し、“糖質ゼロ発泡酒”のパイオニアとしての存在感をますます高めていきます。
(*)栄養表示基準に基づき、糖質0.5g(100ml当たり)未満を「糖質ゼロ」としています。
新ジャンルでは、“うまみがあって雑味がない”クリアな味を実現した新商品『クリア アサヒ』を、当社の主力ブランドに位置付け、広告・販促を集中させていきます。昨年発売した『あじわい』は、引き続き“大麦由来原料99.9%”という明確な商品特長を訴求し、育成していきます。
■焼酎、低アルコール飲料、洋酒、ワイン 各分野での取り組み
焼酎では、甲乙混和焼酎のトップブランドである『かのか』を、ラインアップ展開や発売15周年を記念した大型消費者キャンペーン等を通じて、さらに愛されるブランドへと育成します。
乙類焼酎においては、いも焼酎、麦焼酎を中心に、家庭用市場への商品提案、販促提案を強め、甲類焼酎については、『大五郎』を主体に地域性にあわせたマーケティングを展開します。
低アルコール飲料では、缶入りカクテルとして磐石の地位をいただいている『カクテルパートナー』と、果汁系チューハイとして高い評価をいただいている『旬果搾り』のさらなるブランド強化を進めていきます。それぞれのブランド特性にしたがってオリジナリティ溢れる商品提案をおこない、お客様が低アルコール飲料に求める“選ぶ楽しさ”をご提供していきます。
加えて、カゴメ(株)との共同開発商品第二弾『ベジーテ』を発売し、“野菜使用の低アルコール飲料”市場の拡大を目指します。
洋酒では、国産ウイスキーの代表的ブランド『ブラックニッカ クリアブレンド』を本年も重点強化ブランドとするとともに、昨年から展開を本格化させたシングルモルトウイスキーの家庭用市場への提案をさらに進め、家庭用ウイスキーの市場活性、ニッカ・ブランドの強化育成に取り組んでいきます。
ワインについては、国産ワインでは『サントネージュワイン』のブランド強化、輸入ワインでは、『ローズマウント』『バロン・フィリップ』など重点ブランドの強化育成を中心に進め、業界屈指のポートフォリオを活用した幅広い提案を継続していきます。
2008年のグループ事業の取り組み
飲料事業においては、中核であるアサヒ飲料(株)、チルド事業の(株)エルビー2社が、既存事業の自立的成長を進めるとともに、飲料事業の「飛躍的成長」を目指した優先的資源配分を行っていきます。
アサヒ飲料(株)は、『三ツ矢』『ワンダ』『十六茶』の基幹3ブランドと『富士山のバナジウム天然水』を中心に既存ブランドの高付加価値戦略を推進し、昨年の『三ツ矢』ブランドに続く年間3,000万ケースブランドを育成します。また、カルピス(株)との統合提携によって22万台規模となった自販機チャネルをはじめチャネル別営業体制を強化し、業界平均を上回る成長を目指します。
食品・薬品事業においては、菓子・即席食、乳幼児食、健康食品・OTC、調味料といった主要展開領域の自力成長に加え、新規の事業投資も視野に入れながら、事業全体の強化を進めます。昨年ミント系錠菓で売上金額でもトップブランドとなった『ミンティア』をはじめ、バランス栄養食『バランスアップ』、ダイエット補助食品『スリムアップスリム』、乳幼児食品・飲料の和光堂ブランド等に、グループで研究する機能性素材の活用、事業内での製造技術の相互展開などによって付加価値を高め、さらに大きなブランドへの育成を進めます。
国際事業においては、「成長性溢れるアジア地域のリーディングカンパニー」というグループの将来像を見据え、新規の事業投資や提携も視野に入れながら、既存事業の基盤強化と収益性の向上に努めます。中国におけるビール事業では、市場競争が高まる中で各ビール会社の勝ち残りに向けた競争力強化を進めます。また、海外での飲料事業においては、韓国のヘテ飲料の経営強化を進め、安定的な成長路線の構築に努めるとともに、飛躍的な成長を遂げている中国の康師傅飲品控股有限公司に対しては、中国飲料市場での販売量No.1獲得を目指した経営サポートを継続し、磐石の事業基盤を構築します。