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平成18年1月31日
アサヒビール株式会社
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
九州沖縄農業研究センター
高バイオマス量サトウキビを用いたバイオマスエタノール製造・利用の実証研究
エネルギー用作物の開発からエネルギー利用までを一貫して行う、日本初の取り組み

沖縄県・伊江島で、本日より本格スタート


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 アサヒビール株式会社(本社 東京、社長 池田弘一)と独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター(所在地 熊本県菊池郡西合志町、所長 山川理)は、沖縄県・伊江村において実施する、高バイオマス量サトウキビを原料とするバイオマスエタノール製造及び燃料用途利用の実証試験を、本日より本格スタートします。実証試験では、エネルギー用に開発されたサトウキビの栽培・収穫からバイオマスエタノールの製造、そしてガソリンに3%混合したE3ガソリンを自動車用燃料として実際に使用するまでの工程全般を一貫して行い、物質収支・エネルギー収支を検証するとともに、各工程でのいっそうの技術向上に努めます。
 バイオマスエネルギー利用に向けた取り組みは全国各所で行われていますが、エネルギー原料となる資源作物の開発から、その栽培、エタノールの製造及び利用を一貫して行う実証試験は日本で初めてのものとなります。
 なお、この実証試験については、内閣府、農林水産省、経済産業省、環境省の一府三省との連携プロジェクトとして進めます。

 アサヒビール(株)技術開発研究所(所長:滝口進、所在地:茨城県守谷市)と九州沖縄農業研究センターでは、通常のサトウキビよりもバイオマス収量が大きい高バイオマス量サトウキビを原料として、単位面積あたりの通常の砂糖生産量は維持したうえで、残存分からエタノールを高効率で製造することにより、国産サトウキビを使って経済性を満たすバイオマスエタノールを製造するプロセスの開発研究を進めています。
 平成14年の共同研究の開始以降、両者ではエネルギー用高バイオマス量サトウキビの開発、そのサトウキビを原料としたベンチプラント・レベルでのエタノール製造研究を行ってきました。そうした研究により要素技術の開発やプロセス実証の知見が得られたため、次段階として、サトウキビ栽培から最終的なE3ガソリンとしての利用までを一貫して実地で行う実証試験をスタートさせることとしたものです。

 両者は、伊江村、JAおきなわ伊江支店など地域の協力を得て、高バイオマス量サトウキビ等を作付面積約50アールで試験栽培し、高バイオマス量サトウキビの収穫物調査ならびに育成系統の生産力評価と品種候補系統の選定を行います。さらに、実証試験のため新たに建設した製糖・エタノール製造のパイロットプラント(サトウキビ計画処理量30トン/年)において、その高バイオマス量サトウキビを原料として製糖及びエタノール製造試験を行います。計画では、50アールから年間30トンのサトウキビを収穫し、砂糖約2トンとバイオマスエタノール約1キロリットルを製造します。バイオマスエタノールは、ガソリンと3%の割合で混合しE3ガソリンとして伊江村の公用車で利用されます。
 また、高バイオマス量サトウキビから製糖の副産物として出るバガス(蔗汁を搾ったあとの搾りかす)は、製糖・エタノール製造における熱源として利用するとともに、余剰分は畜産の敷料にしたうえで最終的には村の堆肥センターで堆肥化し、葉タバコなどの商品作物栽培の肥料として活用する考えです。(添付参考図)

 約4年間にわたる伊江村における実証試験では、こうした資源循環型かつ高効率の製造プロセスを実地で行いながら検証するとともに、各工程での効率向上のための研究を進めることで、数年後に、国産サトウキビを原料としながら経済性あるバイオマスエタノール製造の事業モデルを確立することを目指します。

 「将来に向け、持続的に発展可能な資源循環型社会を築く」という観点から、太陽光や風力などの自然エネルギーとともに、バイオマス(量的生物資源)エネルギーは、再生可能エネルギーとして、その普及が期待されています。政府は、平成14年12月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定し、国家プロジェクトとして、その普及を推進する方針を示しました。生物資源を原料としたエタノールである、バイオマスエタノールは、ガソリンに混合して自動車用燃料に使用することが検討されています。化石系燃料から発生する二酸化炭素排出量を抑制できることから、政府はバイオマスエタノール混合ガソリンの実証試験を推進しています。

 当実証試験は一府三省との連携プロジェクトとして進められ、伊江村での高バイオマス量サトウキビ栽培、品種開発については、農林水産省の委託研究「農林水産バイオリサイクル研究プロジェクト」の一部として実施します。高バイオマス量サトウキビから原料糖蜜を作るエタノール製造前工程部分の研究には、農林水産省の「バイオマスの環づくり交付金」の一部が活用されます。エタノール発酵・精製等のエタノール製造後工程部分の研究は、NEDO技術開発機構「バイオマス等未活用エネルギー実証試験事業」との共同研究として行われます。製造されたエタノールのガソリン混合(E3製造)、公用車による走行試験に関する部分は、環境省「地球温暖化対策技術開発事業」の補助金を活用して進めます。

(アサヒビール株式会社)
本部所在地: 東京都墨田区吾妻橋1−23−1
社   長: 池田弘一
研究推進責任者: 技術開発研究所バイオマスグループリーダー 川村公人
広報担当者: 広報部 中原康博、西村 茂     電話03(5608)5126
(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター)
所 在 地: 熊本県菊池郡西合志町須屋2421
所   長: 山川 理
研究推進責任者: 作物機能開発部さとうきび育種研究室長 松岡誠
広報担当者: 企画調整部情報資料課管理係長 野中公広 電話096(242)7530


実証試験の概要
実施主体: アサヒビール株式会社
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
期  間: 平成18年1月〜平成22年3月(予定)
実証試験内容:
(1) 高バイオマス量サトウキビの栽培試験
I ) 高バイオマス量サトウキビ優良系統の選抜
II ) 試験用サトウキビの生産力検定
(2) 砂糖・エタノール同時製造試験実証
高バイオマス量サトウキビからの砂糖とエタノールの同時製造
(物質収支、エネルギー収支の検証)
(3) E3ガソリン製造・自動車走行試験
I ) (1) エタノール混合ガソリンの製造試験(37KL/年)
II ) 伊江村公用車でのE3ガソリン走行試験
(4) 副産物の総合利用試験
I ) 製糖副産物(バガス、梢頭部)の畜産利用
II ) 製糖副産物、畜産廃棄物の堆肥利用、地力維持
III ) エタノール副産物(酵母)の有効利用
IV ) 排水処理(製糖排水、蒸留廃液)
V ) 水の循環利用
試験製造規模:
パイロットプラント稼働日数
原料サトウキビ処理量
砂糖製造量
エタノール製造量
50日/年
30トン/年 (600kg/日)
2トン/年 (40kg/日)
1.1キロリットル/年 (20リットル/日)


高バイオマス量サトウキビの特徴
(1) 高いバイオマス生産量
高バイオマス量サトウキビは、従来種より一株あたりの茎の数が極めて多く、株の再生力が旺盛であるため複数年の連続株出し栽培では単位面積当りのバイオマス生産量が従来種の2倍以上となる。そのため、単位面積あたりの蔗糖量が従来種より多くなり、また、燃焼エネルギー源として利用可能なバガスの生成量も従来種の3倍以上と大きく増加する。
(2) 不良環境への強さ
乾燥や荒地、台風の影響など、食糧作物が栽培しにくい不良環境に、比較的強い。


実証試験を行う、エタノール製造プロセスの特徴
製造プロセス概念図
(1) 環境に優しい
副産物のバガスの燃焼エネルギーで、砂糖とエタノールの生産に必要な全エネルギーを賄う設計となっている。したがって、化石燃料に由来するエネルギーの使用はなく、原料だけでなく製造エネルギーもバイオマスに由来する、完全に“カーボンニュートラル”な製造プロセスとなる。
(2) エタノール生産と砂糖生産との共存
従来種よりバイオマス生産量が高いため、蔗糖含有率は低いが、従来の砂糖生産量を維持しても、蔗糖分が多く余ることになる。その余剰分をエタノール製造の原料として利用することで、砂糖生産に影響を与えずに、エタノール製造が可能になる。
(3) 安価な製造コストを実現する効率の高さ
上述の通り、製造に関するエネルギーはバガスの燃焼エネルギーで賄うため、エタノール製造のために外部からエネルギーを供給する必要がなく、エネルギーコストは不要になる。更に余剰エネルギーは売却することも可能である。また、従来の砂糖製造量を確保したうえで、残糖量の多い糖蜜を原料としてエタノールを製造し、その収量を高めることを目指す。その結果、単位面積あたりのエタノール生産量は、従来のサトウキビで作った場合に比べて3倍以上に増加する。
(注) 伊江島における実証研究では、バガスを熱源とした発電試験は行わない。また、地域の産業と融合した資源循環型モデルを検討するため、バガスは、燃焼エネルギーとしての利用のみならず、畜産用敷料、堆肥などへの利用を想定している。また,サトウキビ梢頭部(葉の部分)については飼料としての利用も検討している。



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