平成15年5月16日 |
「シミシフーガ(学名:Cimicifuga racemosa)の抗ストレス作用」の 学会発表について 経口摂取による抗ストレス効果を、動物実験で確認。 作用成分「アクテイン」を特定。 |
アサヒビール株式会社 |
アサヒビール株式会社(本社 東京、社長 池田弘一)が、天然の機能性素材の探索と機能研究の一環として、食品原料用ハーブのひとつであるシミシフーガ(学名:Cimicifuga
racemosa 、慣用名:ブラックコホシュ)について行った研究により、同素材が抗ストレス作用を有することが確認されました。さらに、アサヒビール(株)と東京薬科大学薬学部・指田豊教授(薬用植物学)のグループが共同で行った研究により、その作用に係わる物質を特定することができました。これらの研究成果は、5月17日(土)〜19日(月)に福岡県福岡市で開催される「第57回日本栄養・食糧学会大会」において発表されます。
現代はストレス過負荷の時代といわれ、現代に暮らすものは多かれ少なかれ、ストレスの影響のもとに生活をしています。この様なストレスの人体に及ぼす影響は近年になって詳細に調査・研究されるようになり、多様な影響を及ぼすことが報告されています。アサヒビール(株)R&D本部未来技術研究所では、こうしたストレスの影響を緩和させるような食品素材を探索し、天然素材を用いた機能性食品への応用に繋げる考えで、研究に着手しました。 アサヒビール(株)R&D本部では、マウスを用いた動物試験により、150余に及ぶ機能性食品素材について探索を行った結果、北米原産のキンポウゲ科の多年生草木であるシミシフーガに抗ストレス効果があることを確認しました。試験では、マウスに経口摂取で各食品素材を投与したうえで、様々なストレス影響下におき、ストレスの影響によって内分泌されると知られる物質群の血中濃度を測定し、各素材の抗ストレス効果を判断しました。その結果、シミシフーガ・エキスの経口投与によって、ストレスによる内分泌物質の過剰生成や組織損傷が、用量依存的に抑制されることを確認したものです。 さらに、東京薬科大学薬学部・指田豊教授のグループと共同研究を行い、シミシフーガの抗ストレス効果成分の特定を進めたところ、アクテイン(トリテンペル配糖体)が有効性をもつことが明らかになりました。また、シミシフーガは、ラットを用いた今回の研究で、水浸拘束ストレス胃潰瘍の改善作用についても効果が確認されたことにより、生体内でのストレスに対する防御反応を総合的に活性化して、ストレスの影響を緩和することが示唆されました。 今回、動物試験により、経口摂取によるシミシフーガの抗ストレス作用が確認できたこと、またその効果成分アクテインを特定できたことにより、今後の「ストレスを緩和させる」という画期的な機能性食品への応用、開発への展開が期待されます。アサヒビール(株)R&D本部では、今後さらに、抗ストレス効果のメカニズムの解析及び実用化研究を進める考えです。 アサヒビール・グループでは、酒類事業における原料・素材研究から派生したビール酵母、ホップ・ポリフェノール、リンゴ・ポリフェノールなどの素材をはじめとし、広く各種天然素材の有するの健康への機能の解明、さらに機能性素材としての応用を目指した研究活動を進めています。 「シミシフーガ」とは
アサヒビール(株)R&D本部未来技術研究所では、今回の研究において、動物試験において、食品原料用ハーブの一種であるシミシフーガが、抗ストレス作用を有することを確認しました。また、東京薬科大学薬学部・指田豊教授(薬用植物学)のグループと行った共同研究により、その効果物質がアクテイン(Actein)であることを特定しました。 動物試験では、マウスに、シミシフーガ・エキスの懸濁液及び対照の水を経口投与し、投与後30分後に30ml試験管に閉じ込めて閉所閉込ストレスを課しました。1時間後解放して採血し、ストレス負荷によって血液中に分泌されるホルモンであるコルチコステロン(ステロイドホルモン)濃度と、ストレス負荷によって損傷を受けた肝臓等から血中に漏出したGOT(注)の活性を測定しました。 (注)GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ): 血液中の肝疾患の指標となる酵素であり、数値が高いと肝疾患の可能性が高いとされる。 投与したシミシフーガ・エキスの量と、マウスのストレス負荷後の血漿中コルチコステロン濃度、血漿中GOT濃度をそれぞれ比較した結果が以下の図表です。シミシフーガ・エキスは、用量依存的かつ有意に閉所閉込ストレスによる過剰な内分泌応答と組織損傷を抑制していることがわかります。 |