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スペシャルインタビュー 綿矢りさ×ビールギフト

INTERVIEW ビールギフトは、
玄関を開けて
やってくる祝祭

2022年お歳暮ギフトに合わせて書き下ろされた2編のショートストーリー「彩りを贈る箱」「虹を架ける風習」。ビールギフトにちなんで書かれたこの作品には、どのような思いが込められているのか、作家の綿矢りささんにお話を伺いました。

親しい間柄だからこそ
「お歳暮」の意外性が楽しい

今回のショートストーリーを書くうえで意識したのは、「世代」です。個人的なイメージかもしれないですけど、お歳暮を贈り合う習慣って、私よりも上の世代の文化、という感じがするんですよ。それでも、やっぱりお歳暮って世代に関係なく、実際にいただくとすごく嬉しいものですよね。

お歳暮に馴染みのない下の世代にとっても、親しい人からちょっとかしこまったギフトが届くという意外性や驚きは、楽しいものだと思うんです。若い人たちにもビールギフトを贈り合う習慣ができたら面白いなと、そういうことを意識しながら物語を書きました。

私自身も贈り物をするのは好きで。お中元やお歳暮のシーズンになると、デパートや百貨店の催事場にギフトがバーっと並びますよね。さまざまな品物を見ながら「あ、これいいな」って贈り物を選ぶ時間が大好きなんです。そしてギフトを選んだら、持ってきた手紙を入れてもらって、伝票を書いて、そのまま送っちゃいます。

ギフトは直接会って渡すのもいいんですけど、持って帰るのが重くて大変かもしれないですし、「ピンポーン、お届け物です」といって配達されてくる贈り物って、すごくワクワクするじゃないですか。お店から送ったギフトってちゃんとした形で相手の元に届くので、特別感もありますし、私は住所を知っている相手なら、お祝いの品は送りたい派ですね。

ビールは「祝祭感」
のある飲み物

物語では、お歳暮が届いてからすぐに双子の姉妹が会話をするという流れにしたかったので、贈られてきたビールを飲みながらオンライン飲み会をするという設定にしました。

電話で会話するのと違って、オンライン飲み会だと画面越しに何を食べたり、飲んだりしているのかが分かるので面白いですよね。一人がお酒を飲み出したら、みんな「私も取ってくるね」って冷蔵庫に向かうという(笑)。それから、一人ずつ自分が飲んでいる飲み物を紹介し合うのも楽しくて。

私も飲み会があると、まず最初に頼むのはビール。ビールって面白いなあと思って、みんなとりあえず最初の一杯という感じで頼むじゃないですか。祝祭感というのか、初めに飲んで気持ちを盛り上げる、これから楽しい時間が始まる予感を抱かせる、嬉しい飲み物だなと思います。

私にはどこか懐かしい
ビールギフト

私のまわり、夫も親族もみんなお酒が好きなんです。父も昔からお酒が大好きで、子どもの頃は実家によくビールギフトが届いていました。だから、あの箱のずっしりと重い感じや、包装の豪華さにワクワクする感覚は、私にはちょっと懐かしくて。そういえば小学生の頃、父の日にビールをプレゼントしたこともありましたね。一缶だけ「はい」って渡しただけだと思うんですけど(笑)。
だから、もし今誰かにビールギフトを贈るとしたら、親族ですね。

ギフト内封リーフレットに今回のショートストーリーが掲載されているので、親族に贈って「私の仕事、どうだあ!」って、ドヤりたいですね。

綿矢りさ /
RISA WATAYA

1984年京都府生まれ。2001年『インストール』で文藝賞受賞。早稲田大学在学中の2004年『蹴りたい背中』で芥川賞受賞。2012年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞、2020年『生のみ生のままで』で島清恋愛文学賞受賞。ほかの著書に『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』『オーラの発表会』『あのころなにしてた?』『嫌いなら呼ぶなよ』などがある。
(撮影/イマキイレカオリ)

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