アサヒビール株式会社
一人暮らしの食生活の実態を分析
40代以下は1品目“だけ”、好きなもの“だけ”を食べる「だけ食」が、
50代以上は「一汁三菜」スタイルの手作り食が主流
〜アサヒビールお客様生活文化研究所の調査結果より〜
アサヒビール株式会社(本社 東京、社長 荻田伍)のお客様生活文化研究所は、近年増加しつつある「単身世帯(一人暮らし世帯)」の「食と健康」に関する意識と実態を探るため、当研究所が毎年行っている「食と健康」に関する意識調査の一環として、インターネットを通じて首都圏在住の15〜69歳の単身世帯男女168名を対象としたアンケート調査と、同男女46名を対象とした食卓写真調査を行いました。この結果、以下のような傾向があることがわかりました。
◆ | 単身世帯と家族世帯の食生活を比較 |
(1) | 単身世帯で「食生活が健康的である」と感じている人は4割に満たず、家族世帯の3分の2にとどまる。 |
(2) | 単身世帯の半分以上に「食生活を向上させたい」という意欲があるものの、実践できている人は少数派。 |
(3) | 単身世帯では家族世帯に比べて野菜ジュース、栄養ドリンクなどを積極的に活用。 |
◆ | 単身世帯の食生活を世代別に比較 |
(1) | 40代以下は「朝食は抜き、夕食は調理済みのもの」、50代以上は「3食きちんと、夕食は自分で調理」が主流。 |
(2) | 40代以下は、1品目“だけ”、好きなもの“だけ”を食べる「だけ食」が多く見られる。パソコンを操作しながらの「ながら食」も出現。 |
(3) | 50代以上は、「一汁三菜」スタイルなど充実した食生活が主流。 |
(4) | 40代以下と50代以上で食生活が大きく異なるのは、幼少期からの食体験の違いが主な要因。 |
近年の晩婚化や出生率の低下などに伴い、これまで世帯の種類として最も多かった親と子どもからなる「家族世帯」は年々減少しており、1980年には1508万世帯(世帯全体の42%)だったものが、2008年には1429万世帯(同29%)まで減っています。
一方で増加が目立つのが「単身世帯」です。1980年には710万世帯(同20%)とファミリー世帯に比べ少数派でしたが、2006年には1471万世帯に拡大し、ファミリー世帯を抜いて最も大きな割合を占める世帯(同30%)となりました。この傾向は今後も続き、2030年には1827万世帯(同37%)まで増加すると予測されています[資料1]。
◆単身世帯と家族世帯の食生活を比較
今回の調査では、家族世帯にも単身世帯と同様のアンケート調査を実施し、両者の比較を行いました。
(1)単身世帯で「食生活が健康的である」と感じている人は4割に満たず、家族世帯の3分の2にとどまる。
「食生活が充実している」と感じている人は、家族世帯では60%であるのに対し単身世帯では34%と3分の2程度にとどまり、大きな差がみられました。また「食生活が健康的である」と感じている人も、家族世帯が56%なのに対し単身世帯は38%と20ポイント近くの差があります [資料2]。つまり、単身世帯は家族世帯と比べて、「食生活が充実しておらず、健康的でないと自覚している人が多い」と言え、両者の食生活には、大きな“断層”とも呼べる開きがあることがうかがえます。
(2)単身世帯の半分以上に「食生活を向上させたい」という意欲があるものの、実践できている人は少数派。
単身世帯では、今後充実させたいものとして「食生活」を挙げる人が51%と半数以上。これは家族世帯の42%を10ポイント近く上回っており、単身世帯は、「食生活を向上したい」という意欲は高く持っているようです[資料3]。
しかし実際には、「理想の食生活」と「現実の食生活」のギャップが大きいのが現状。特に単身世帯が気にしているのは「栄養バランス」と「味」です。例えば、平日の夕食について「栄養バランスが取れていること」を「心がけている」人は45%なのに対し、「実践できている」人は25%。理想と現実には20ポイントもの差があり、思い通りにはいかない単身者の食生活の様子が垣間見えます[資料4]。
(3)単身世帯では家族世帯に比べて野菜ジュース、栄養ドリンクなどを積極的に活用。
(2)のような状況が背景にあるためか、単身世帯は食生活の理想と現実のギャップを埋めるために「健康お助けアイテム」を活用しているようです。単身世帯が「健康のために意識して摂る飲食物」を聞いたところ、野菜ジュースやミネラルウォーター、100%果汁飲料といった自然素材の飲料や、栄養補助食品、栄養ドリンクなど栄養補給のできる機能のある飲食物といった、調理がいらず手軽にとれる健康系食品・飲料の摂取が、家族世帯に比べて高いスコアを獲得。特に「野菜ジュース」に関しては37%(家族世帯は26%)が意識的に摂取していることから、単身世帯がこれらの飲食物を、食生活のバランス補正のため積極的に活用していることが分かります[資料5]。
◆単身世帯の食生活を世代別に比較
このように家族世帯とは大きく異なっている単身世帯の食生活ですが、今回の調査で、「40代以下」と「50代以上」には食文化の“断層”ともいうべき大きな溝が存在しており、単身世帯の中でもさらに世代によって食生活の違いが見られることがわかりました。
(1)40代以下は「朝食は抜き、夕食は調理済みのもの」、50代以上は「3食きちんと、夕食は自分で調理」が主流。
「40代以下」と「50代以上」では、まず食事のとり方が全く違うことがアンケート調査から明らかになりました。例えば、朝食の摂取率を見ると、40代以下では「毎日必ず食べる」人が単身世帯全体の平均に比べて少なく、特に男性30・40代では3割程度にとどまっています。これに対して、50代以上では男性は68%、女性82%と大半の人が「毎日必ず食べる」と答えており、大きな差があります [資料6]。
また、平日の夕食の調理率を見ても、40代以下では、約6〜8割の人ができあいのものや外食で済ませているのに対して、50代以上では男性の44%、女性の53%が「ほとんど調理(自分で調理)」したものを食べています[資料7]。
基本的な調理器具の保有率でも、食事には欠かせないご飯を炊く炊飯器を保有していない人が男性30・40代では約2割に上っており、40代以下が調理から遠ざかっていることがうかがえます[資料8]。
これらのことから、40代以下の単身世帯が朝食を欠食したり、非調理の夕食に頼っているのに対し、50代以上は朝食をきちんと食べ、夜は自分で調理するという食事をしているという、非常に対照的な食生活を送っていることが分かります。
(2)40代以下は、1品目“だけ”、好きなもの“だけ”を食べる「だけ食」が多く見られる。パソコンを操作しながらの「ながら食」も出現。
さらに、食卓写真調査から、この2つの世代は食事内容にも大きな違いがあることが分かりました。40代以下の食事内容の大きな特徴は、品数が少なく1品目“だけ”、好きなもの“だけ”食べるといった1人暮らしならではの手軽な食事、すなわち「だけ食」とでも言うべき食事をとっている人が多いことです。
後片付けの手間はなるべく減らして手早く食事を済ませたいという意識が強く、片付けのいらないコンビニのおにぎりや菓子パンなどを1品目“だけ”食べる、パスタなどの麺類をワンプレート“だけ”で済ますといった食生活を送っている人も多いようです[資料9、写真2] 。さらに、間食を控えること、主菜・副菜が揃った献立や品数をとることなどへの意識も低く、自分の好きなもの“だけ”を組み合わせて食べる人や、味や栄養よりも、とにかく満腹感“だけ”を優先した食事をとっている人も見られました[資料10〜11、写真3]。
また、男性20代以下の約2割がパソコンを見ながら夕食を摂取していることがわかりました[資料12]。写真調査でも20〜30代の男性を中心にパソコンの前で食事をしている写真が見られます。従来は、「ながら食」といえば、「テレビや雑誌を見ながら」というのが一般的でしたが、男性20代以下では、ひとりでパソコンをお供に食べる新しい「ながら食」がなされていることが分かりました[資料13、写真1]。
このように40代以下の単身世帯では、1人暮らしに最適化されたアンバランスな「“だけ”食生活」が徐々に拡大しつつあり、食の文化的側面である「会話を楽しみながら食事する」「調理のプロセスも含めて食を楽しむ」「食べ合わせや献立を工夫する」といった面は薄れてきているようです。
(3)50代以上は、「一汁三菜」スタイルなど充実した食生活が主流。
一方、50代以上の食事の大きな特徴は、「食べることは生きること(生食同源)」とばかり、味の面からも健康面からも、1人暮らしとは思えないくらい充実した食生活を楽しんでいる人が多いことです。
彼等は食事を自分で調理することが多い上に、その内容も豊かです。写真調査で「自宅での1人で食べる食事」を見ると、40代以下では調理と後片付けの手間を省く為のできあいのものやワンプレート食が多いのに対し、50代以上はさまざまなメニューがいくつものお皿に盛り付けられた「一汁三菜」スタイルの食事をとっている人が多く見られます [写真4]。また、アンケートの中で「食は健康の元になると思って作っています」と答えるなど、50代以上は、「食べること」「健康であること」と「生きること」は切っても切れないもの=「生食同源」と考え、自分に出来る最大限の力で、食材からの栄養補給や健康維持の心がけをしていると共に、友人と誘い合って一緒に会話をしながら食事を摂るなど、楽しみながらの食事機会も積極的に作っているようです。
(4)40代以下と50代以上で食生活が大きく異なるのは、幼少期からの食体験の違いが主な要因。
このような世代間の食内容の違い=“断層”は、なぜ生まれているのでしょうか。大きな要因のひとつとして、各世代が過ごしてきた幼少期からの食体験の違いが考えられます。アンケート調査で「幼少期の食状況」について聞いたところ、「家族揃っての食事では全員同じメニューを食べる」食生活だったと答えた人は、単身世帯の男性50代以上で56%だったのに対し、20代以下は35%と20ポイントの差がありました。
また、「家族揃ってから食べ始める」も男性50代以上では50%ですが、20代以下では31%。「家庭独自の味(お袋の味)を大切にする」に至っては、男性50代以上では44%だったのに対し、20代以下は20%と半分以下になっています[資料14]。
これらのことから推察すると、現在の50代以上の世代までは親から子に伝承されてきた「家族揃って食卓を囲み、その家庭の味を食べる」という食文化は40代以下になると途切れ、それが幼少期の食体験、つまり食の原風景の違いを生み、現在の「食の“断層”」につながっていると考えることができそうです。
◆まとめ
以上のように、世代間にも「食の“断層”」を抱える単身世帯ですが、現在の40代以下の世代が、今後単身世帯の中で大きな割合を占めるようになると、単身者世帯の「“だけ”食生活」化は一層進むことが予測されます。このことは、「食べものを食べ、効率的に栄養を補給する」という食の機能的な面がより重視される反面、今まで受け継がれ、育まれてきた食の情緒的・文化的な面が薄れ、“食の楽しさ”や“豊かさ”が単身世帯の中から失われていく、という状況を生み出しかねません。また、食生活に起因する生活習慣病が増加するなど、健康面への影響も懸念されます。
しかし、調査結果にも出ていたとおり、単身世帯の半分以上には「食生活を向上させたい」という意欲があり、今後これらの問題をサポートしていく商品やサービスに対するお客様の期待はますます高まる可能性があります。たとえば、「不足しがちな栄養素を補う」「手軽に摂取できる」「食のシーンに“楽しさ”や“豊かさ”を提供する」「今後増加する高齢単身世帯をサポートする」といった要素は、今後の食ビジネスにおいて重要なキーワードとなることが予想されます。
アサヒビールグループは「食と健康」を事業ドメインとして、お客さまの健康で豊かな生活の実現に貢献することを目指した事業活動を展開しています。今回のような調査などを通じてお客様の「食と健康」についての理解を深めるとともに、さまざまな商品提案を通じて豊かな食生活の実現に貢献していきます。
【調査概要】
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【本調査に関するお問い合わせ先】
アサヒビール株式会社 お客様生活文化研究所 TEL:03-3498-1810
(お客様生活文化研究所のサイト「青山ハッピー研究所」
http://www.hapiken.jp)