A そうですね。日本の大会も非常に興味深いのですが、なにより世界のバーテンダーと触れ合える、という点に強く惹かれました。何度か海外のコンペティションに参加させていただいたことがあるのですが、海外の方のアイデアやパフォーマンスはとにかく斬新で、とてもいい刺激になりました。雰囲気も日本の大会とはだいぶ違って、実際に参加してみないと感じられない部分が多くありました。今回も参加するからには勝負にもこだわりますが、それ以上に世界6大陸から参加されるさまざまなバックボーンを持ったバーテンダーの方々と触れ合うことで、新しい何かを発見したり、自分自身のバーテンディングを見直したり、そういう機会にしたいと考えています。また私が世界の舞台にチャレンジすることによって、後輩のバーテンダーたちに多少なりとも刺激を与えられたら、という思いもあります。
Q 日本の大会と海外の大会の違いは何ですか?
A 私の知る範囲での見解ですが、海外の大会では、はっきりした味わい、主張あるパフォーマンスが評価されますね。日本人の繊細さや微妙なニュアンスなどは、なかなか海外の審査員の方には伝わらないようです。今回の「ボルス・アラウンド・ザ・ワールド」に関しては、まったくはじめての大会なので、海外向けの味わいやパフォーマンスで勝負するか、日本人として自分が培ってきたスタイルで勝負するか、まだ決めかねているところです。いずれにせよ、見ず知らずの海外の大会ですので、周到な準備を心がけたいと思っています。
A 自分なりに1920年代を調べてみると、カクテル文化も含めて、世界の近代化がはじまった年代だということがわかりました。だからといって1920年代を懐古的にふりかえるのではなく、交通や流通が発展したことで、世界のカルチャーが混じり合い、急速なグローバル化が進んだ1920年代の上に成り立つ「現在」という視点に立って、カクテルをつくろうと考えました。
A まず、世界中のどんな方が飲んでもおいしいと感じていただけるような味わいを目指しました。ベースとしたのは、ボルスマンゴーとボルスピーチです。特にアジアっぽさやトロピカルなイメージを追求した訳ではありませんが、多くのゲストに気に入っていただけるような味わいを目指した結果、このようなレシピになりました。それから、1920年代のミックスカルチャー感を表現するために、ゼリーと液体という2つの異なるテクスチャーを使用し、異文化が融合・交流するイメージに仕上げました。「グローバル・タッチ」というネーミングにも、異文化の融合・交流という意味合いを込めています。
A 実はいま、苦労しています(笑)。ライト&ヘルシーという意味では現代的なカクテルなのですが、味わいがやさしすぎるのでコンペティション向きではないのかなと……。カクテルの味わいはもちろん、当日のパフォーマンスやスピーチの内容まで、今はとにかく試行錯誤を繰り返しながら、本番に向けてのイメージトレーニングをしています。
Q 大会を主催するボルスの印象をお聞かせください。
A 我々日本人のバーテンダーにとっては、リキュールの定番、あるいは王道といったイメージでしょうか。まずはどのリキュールも色合いが美しいです。それから軽やかな飲み口の割に、フレイバーがしっかりしていることが挙げられます。ですから、非常に使いやすいですね。今大会に参加して改めて感じたのは、やはりオランダというお国柄のせいなのか、グローバルに展開する世界基準のリキュールブランドなんだな、ということです。
Q 最後に、ファイナルにむけての抱負をお聞かせください。
A 大会に参加するにあたって、多くの方からアドバイスやアイデアをいただきました。ホテルという仕事柄、さまざまな国籍のスタッフもいますし、シェフやサービスのプロファッショナルもいます。そういう周囲のスタッフの支えがあって大会に参加できるんだと、改めて実感しています。また世界のさまざまな地域からトップバーテンダーが集まる貴重な機会ですので、いろいろなものを吸収してきたいと思います。そのためにも、まずは自分自身が「ボルス・アラウンド・ザ・ワールド」を心から楽しみたいと思います。