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「ほんがら松明」〜ドキュメンタリーから考えること。

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先日、「ほんがら」という感動的なドキュメンタリー映像を観ました。
このドキュメンタリーを観ながら、記録を残す、という行為とその効果について考えました。

これは、滋賀県近江八幡市島町という琵琶湖のほとりに位置する風光明媚な農村集落でのお話。
この地域に千年以上も続く「松明(たいまつ)祭り」で、「ほんがら松明」を約50年ぶりに復活させようとしている老人たちに密着した映像です。


「ほんがら松明」とは、「菜種ガラやヨシなどの天然素材で作るエントツ状の巨大な松明」。
この「エントツ状」というのが大変なシロモノで、そうそう簡単に作れるものではなく、最近では、「どんがら松明」と呼ばれるエントツ状ではない松明しか作っていなかったそうです。

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菜種ガラの収穫からはじまり、その作り方は、地元で生まれ育った70歳以上の老人約15名の記憶をたどるのみ。各人の記憶にズレもあります。が、そのズレをすり合わせながら、「ほんがら松明」は出来上がっていきます。たぶん最終目標のイメージが強烈に共有されているからでしょう、記憶のすり合わせ作業はさほど大変ではなさそうです。そんなやりとりや、作り方もあらためて映像で記録されていきます。

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松明の芯を作るために必要な、自分の身丈をはるかに超える背の高い竹を刈り、運び、またその竹を割(さ)き、竹をしならせ輪を作っていく作業など、見ているだけで力のいる作業を、老人達は50年ぶりとはいえ、手馴れた作業でこなします。この手さばきは本当に見事。途中から村の若者も参加しますが、まるでうまくいきません。必要なのは「力」だけではないということがわかります。

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松明ができあがっていくシーンの合間合間に、老人達の、祭に対する想い、地域への愛着、後継者や未来への期待、等々が語られます。カメラを向けられて、少しはにかむようでいて、それぞれが意志のある言葉をもってお話になります。たぶん、これまで誰に対しても語られてなかった想いもあるかもしれません。記録を残す、という行為を前にして、あらためて引き出された、とても大切な想いです。


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また、その想いを句にしたものが映像の合間に差し込まれます。これも言い得て妙な名句ばかり。句を作るという行為はいろいろな感覚をひとつの制約の中にダイジェストするクリエイティブな作業です。老人達は、この句を作成するときも、きっとさまざまなことを想起したのではないでしょうか。絶妙な構成と編集がなされているな、と思いました。

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映像は、祭の進行をどうするかというところで生まれる老人と若者たちのギャップも映し出していきます。
最終的には、祭の日には、多くの男達が祝い酒を飲み交わし、壮絶な火付けをやり、立ち上り燃え盛る松明を、最後には本当に「呆然と」見上げます。
それはそれは、壮観な祭のシーンでもあり、「感動」を共有するということが世代や時代を超え「心」をつなげていく、ということを見事に映し出していました。その激しく燃える「ほんがら松明」ができあがるまでのプロセスと、その炎の美しさが、まさしくその「つなぎて」の在り方を象徴するものでしょう。

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この映像を企画制作をしたのは、近江八幡を中心に活動する地域プロデューサーズ「ひょうたんからKO-MA」という市民団体。
この団体の「ミッション」はズバリ「農村再生」と言い、農村内のコミュニティの希薄化、世代間コミュニケーションの欠如、伝承文化の衰退、生活の智慧の消滅、地域生態系の崩壊...といった深刻な課題を解決するため、ともに考え、彼らのもてる技術(たとえば映像を作る)をもってサポートしています。

今回のこの映像を見て、感動するとともに、この団体の「しかけ」作りの見事さを思いました。映像という技術で、時代を編集しなおすということ。編集されなおす地域の歴史に、撮影という行為を通じて、今そこに暮らす人の想いを介在させること。
また、変わりゆくものを悲しんだり憂うだけではなく、その過程を記録し、伝え残していくこと。また、残し伝えていくその方法をともに考えていくこと。そして、こういった作業を地域で地道に行っているということの重要さを感じます。

これらの作業は記録としてDVDという媒体にコピーされ、時代を超え、多くの人の手にわたっていくということにも大きな意味があるでしょう。(実際に、このDVDは2000円で販売されています。)


たくさんの知恵や経験や技術が「想い」とコラボレーションして「ステキ」が生まれていくんだなと思いました。
次にこのNPOが次にしかけているのが「遺言」というプロジェクト。これも非常に興味深い活動です。


★写真提供:ひょうたんからKO−MA

★「ほんがら」 監督・撮影・編集:長岡野亜/特別協力:原一男
*ドキュメンタリー「ほんがら」公式HP クリック→http://gonza.xii.jp/mura/

★地域プロデューサーズ ひょうたんからKO-MA(こま) ブログ クリック→http://www.voluntary.jp/weblog/myblog/405/
*「遺言」プロジェクト クリック→http://www.voluntary.jp/weblog/myblog/405/1920222#1920222

(ハナコ)


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