半世紀前のデザイナー誕生
先日「1950年代日本のグラフィック」企画展が、凸版印刷様の印刷博物館で開催されましたので、早速行ってまいりました。この企画展は、4月19日から7月6日まで開催されており、1950年代の各企業より集められたグラフィック関係資料を約500点展示されています。1950年代といえば戦後の混乱も落ち着き高度経済成長へ向かう時期であり、グラフィックデザインの黎明期ともいえるでしょう。
また、私がこの世に生まれた時代でもあり、何かノスタルジアを感じながら江戸川橋駅から歩いていきました。印刷博物館は、有楽町線の飯田橋と江戸川橋のやや江戸川橋寄りといった立地で、駅から7〜8分かかりますが、私にとっては運動不足の解消にちょうどいい距離といえそうです。
受付を済ませ入場をすると、まずはプロローグ展示ゾーンになり印刷の世界について紹介されています。そして今回のテーマである企画展示ゾーンに進みます。入ってすぐのところに何と当社のポスターを発見。それは1950年のポスターで、大日本麦酒?は1949年に過度経済力集中排除法により、朝日麦酒?と日本麦酒?に分割されましたが、そのことを告知する内容でした。具体的にいうと朝日麦酒は、アサヒビールと三ツ矢サイダーの商標を引き継いだことを明示したもので、デザイン的には古き時代を感じさせるものでした。また、パズル形式のポスターもあり、縦横(6×7)の升目に縦にアサヒビール、横に三ツ矢サイダーと書かれ、アサヒの「サ」とサイダーの「サ」を重ねるように表記し、空いた升目に文字を入れて文章にした変り種的なものです。皆さんもお時間があった時にでも、このパズルを完成させてみてはいかがでしょうか。しかしこんなポスターがあったとは、恥ずかしながら全く知りませんでした。その隣には同業他社のものもあり、当時の懐かしいラベルを見ながら半世紀前のデザインの世界に吸い込まれていきます。ちなみに私が生まれた1957年は、当社が当時最高の品質を謳った新商品「アサヒゴールド」の発売された年ですが、発売時のポスターも展示されていました。
当然ビールだけではなく、菓子、煙草、雑誌、百貨店の包装紙、コンサートの案内等ポスターやパッケージそのものも展示されていて、そこはまるで半世紀前に戻った生活空間が存在しているかのようです。多くは当時の時代を感じさせるようなデザインでしたが、中には今でも違和感がなく十分通用しそうなデザインも散見されました。そういったデザインは、当時の大衆にとってきっと受けはよくなかっただろうと思いつつ、逆にいつの世にも時代の先を読める人っているものだと感心してしまいます。また、デザインは絶えず進化をしていることも実感できます。デザイナーの方は元より、一般の方がご覧になっても十分楽しめる内容かと思いました。
展示品を見ているうちに、昔よくテーブルに置いてあった煙草のパッケージや子供の頃に口にした菓子、何となく見覚えのある雑誌の表紙、どれを取ってもそこには両親の存在が見えてきます。両親にとっては、元気一杯だった20代のデザインです。最近あまり両親宅に顔を出していないので、今度行ったついでに印刷博物館に連れて行って、青春を取り戻してもらおうかなと思いました。(65歳以上の方は入場料は無料です)
(所長)
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