消えてゆく都会のやすらぎ
「麻布十番温泉が今月末で店じまいする」という情報を聞いたので、昨晩行ってきました。以前から前を通るたびに「ちょっと入っていこうかな」と思っていたので、これで最後ならば行かなければならないと情報を教えてくれた友人と慌てて出かけたわけです。
「最近はだいぶ知られてきましたが、東京は昔から温泉が多くあります。
しかもその湯を銭湯で使っていて、銭湯の料金で入浴できるところもあります。麻布十番温泉もその一つで、1階は「越の湯」という銭湯でお風呂だけ、3階が「麻布十番温泉」でサウナと舞台のある休憩室付きで料金も温泉価格になっています。「最後だし、ここは大盤振る舞い!」と3階の温泉に行きました。
メディアを通じて店じまいの情報が流れたため、温泉も銭湯も大盛況のようで、受付と大広間の食事の給仕をしている女性はてんてこ舞い。いつもは二人でやっているのに今日は用があって一人帰っちゃったそうで、手伝ってあげたくなるような状態でした。「混んでて入れないかもしれないから風呂を見てからにして!」といわれのに湯船に入っている人はゼロ。湯船は4人も入れば一杯なので、親切で言ってくれたみたいです。早速お代を払って風呂場に行くと、「熱くて入れない」という理由で湯船に人が居なかったとわかりました。お湯は初めてみたらビックリするような黒湯。水を入れたら薄まっちゃうから駄目なのかなと話していたら、常連の女性が「この蛇口は温泉の水だから入れても大丈夫だよ」と教えてくれて、やっと入れる温度になりました。でも、温度計を見たらまだ46度!一体最初は何度だったんでしょう!?
常連さんは他にもいろいろ教えてくれて、「サウナはここに座った方がいい」とか「お湯はここのご主人が薪で沸かしてる」とか。話は尽きないのですが、慣れない私は熱さにギブアップ。早々に上がりました。脱衣所ではモデルのようにキレイな外国人の女性2人から「何で1階と3階の料金がこんなに違うんだ?」と英語で聞かれ説明に苦労しましたが、彼女達もちゃんと裸になって頭にタオル乗せて正しい風呂の入り方をしていたのにビックリ。日本の入浴スタイルも国際的になりました。
大広間に行ってみると、30人くらいの団体が長いテーブルを囲んで、一人の年輩の方の話に耳を傾けていました。大広間には桜で装飾された舞台の上にカラオケセットと太鼓があって、大勢を前にこの舞台でで歌ったら気持ち良いのでしょうね。昨日は大勢が語らっていましたし、従業員もてんてこ舞いだったので、舞台の写真だけ撮って退散しました。
出入り口には「閉店のお知らせ」の張り紙。理由は「建物・設備の老朽化と店主・従業員の老齢化、後継者難など」だそうです。60年くらい営業していたと聞きましたが、この「昭和」っぽさ、アットホームな雰囲気などすべて無くしてしまうのは惜しい。仕方のないことでも残念です。みんな親切で、都会のど真ん中とは思えない素敵なお風呂でした。
(ぶらりあん)
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